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すっかり暗くなった外の景色を見ようと窓に目をやると、そこに暗い顔をした自分がいることに気づく。 「…あれ?モモちゃんじゃない?」 窓越しに視線を移すと、私より背の高い女の子がすぐ横にいた。 「…あ!美麗ちゃん…!久しぶり」 大学の同期、津雲美麗ちゃんだった。 ………… 「誘って良かったのかなぁ…あんまり顔色が良くないみたいだったけど」 「あ…。大丈夫だよ。誰かと一緒のほうが気が紛れるし…」 だったら霧子と錦之助の方が気を使わないでいられるけど…。 いいの。2人と一緒にいたら、また吉良さんの話をしちゃうから。 「…気が紛れるって…?」 美麗ちゃんにはてな顔をされてハッとする。 慌てていろんな理由をくっつけてごまかして、必死に違う話題を探した。 美麗ちゃんとは学部が同じで、会うとたまに話をする。 正直、2人だけでお店に入るとか初めてで…緊張してたのかもしれない…。 「…そうだ!美麗ちゃん、卒論って…」 「…モモちゃんの彼氏って、理工の院生だった綾瀬先輩だよね?」 やっと見つけた共通の話題だったけど、被せるように言われたのは吉良さんの名前で…私は自分の話を飲み込んで答えた。 「…そう、だね」 こんな風に吉良さんのことを言われるのは、3年経った今でも時々ある。 吉良さんはうちの大学では有名なイケメンだったから。 「…この間ね…会ったの。綾瀬先輩に!」 「…そうなの?」 また私の知らない吉良さんの話だ…と思ったら、ギュッと心臓が苦しくなった。 「…飲みに連れてってくれたんだ!2人で…」 2人で…? 「綾瀬先輩ってすごくお酒に弱いみたいで、首から耳まで赤くなっちゃうんだよ!」 うれしそうに話す声が遠くで聞こえる気がする。 知ってた…?と言われた時は、何の話だっけ?と、思うほど現実感がなくて。 「…もしかしてあんまり興味なし?付き合って3年でしょ?長いしね…そろそろ飽きるって…」 飽きる…って? なにそれ、吉良さんが言ってたの? 「ちょっと呼んでみる?綾瀬先輩!」 携帯を操作しながらそう言うから、また嫌な予感が頭をかすめる。 「知ってるの?連絡先…」 スマホを耳に当て、私をしっかり見ながら言わないで…。 「知ってるよ。連絡先交換したもん」 あ…もしもし…! と言い出した美麗ちゃんを残して、私は1人でお店を出た。 ごめんね美麗ちゃん、もうこれ以上は無理っぽい…。
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