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「あら桜木さんっ!待ってたのよ!」 可愛い下着を購入して、大満足でアパートに帰った私を待ち構えていたのは…。 昨日引っ越しの手伝いをしてあげた、お隣の吉備須川さん。 「…ただいま…です」 浮かれた気持ちに若干黄色信号が点滅する。 …今日は絶対何も手伝わない…! 「今朝…あんたの部屋から出てきた吉良くんに、ばったり会ったのよぅ…」 「…え?朝…ですか?」 あんな早い時間に…と思いながら、早速下の名前を聞き出したと知る。 「…朝帰りするとかさぁ、やっぱりあんたたちってなに?親戚とか?いとこ?」 本当は兄妹なんじゃないの?と決めつけて、それ以外のラブな関係とは思いたくないらしい。 「えっと…私と吉良さんは…」 恋人…なんて、恥ずかしくてなかなか言えない…! …確か3年もその立場に君臨しているというのに…いつまでも初々しさが消えないのがちょっと悲しい。 「まぁいいわっ!昨日引っ越しの荷物を車で運んでた奴、弟なんだけど、あんたのこと可愛いって…!」 そう言いながら部屋に戻って 「タケーっ!」と呼んでる。 吉備須川さんの部屋からおずおずと現れたのは、金髪にピアス、派手なアロハに半ズボンという季節感のない服装をした男性だった。 年齢は…吉良さんと同じくらいかな? 「…どうも、竹矢って言います。タケって呼んでください…!」 派手な外見にちょっと引いたけど、えへへ…と笑う顔は人懐っこい。 「…じゃ早速、はじめようよ!」 吉備須川さん、弟を引き連れて勝手に私の部屋に入ってしまった…。 「…えっと。ちょっと…。な…何をはじめるんですか?」 慌てて部屋に入ると、彼女は一番目立つ場所に飾ってある、鯛のお頭付きと赤飯、そして吉良さんと私の記念の1枚をじっと見てる…。 「早く…呼んでよ。吉良っち」 吉良っち…? 「私は吉良っちと話したいの!仲良くなりたいの!せっかく隣に引っ越してきたんだから!」 「…あの?し、知り合いなんですか?」 「昨日初めて会ったのよ!…あんなイケメン初めて見た…。一目惚れなのっ」 すると弟のタケ、どこから持ってきたのか、お酒を運んできた。 「あ…の。これは、どうして?」 えへへ…と笑うタケ…。 慌てる私をよそに、吉備須川姉弟は、小さいテーブルにつまみをたっぷり並べてセッティング完了してしまった。 「ホラホラっ!早くイケメンを呼んだ呼んだ!」 言われた瞬間突然携帯が鳴り出し、取り落としそうになりながら着信に出た。 「…もしもし…」 「…家にいる?誰か来てんのか?」 愛しのイケメン彼氏さま…。 「…じ、実は、お隣の吉備須川さんと弟さんのタケに、何故か宅飲みをセッティングされてしまって…」 「はぁ?なんだそれ?」 様子から電話が吉良さんだとわかったらしい吉備須川さん。 投げキッスを送る仕草をした。 「…とりあえず行くから」 「…だ…ダメですっ!」
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