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「…モネっち小さくて可愛い…!」
タケが私を腕の中にしまいそうになったところで…
「…言っておくがっ!」
吉備須川さんに絡め取られていた腕を乱暴に離し、その腕を私に伸ばしながら、吉良さんがきっぱり言った。
「桃音をモネって呼べるのは俺だけだ!」
腕を掴まれてそのまま引き寄せられた私は…吉良さんの目の前に移動していた。
私を広げた両足の間に座らせるから、必然的に胸の中…。
こんなに近くに座れるなんて…生きていればいいこともある…!
吉良さんの、いつものいい匂いがして、さらにスリっと近寄ってみる…。
うわぁ〜…怒られない…!
「…モネっちとか…あり得ねぇっ!」
近寄っても怒らないばかりか、嫉妬みたいなことまで言われて気が遠くなる…!
「…なによぅそれ…。ヤキモチ妬いてるみたいじゃない…!」
吉備須川さんに頬をちょんっとされながら言われた吉良さん…ムッとした様子で、いきなりテーブルの上のお酒を手に取ると…
グビグビっと一気飲みして…ぷはーっと息を吐き、みるみる顔を赤くした。
「…別に、ヤキモチじゃない」
そう言ったけど、目がトロンとしてる…
こんな顔、見たことないかも…?
それにしてもお酒をイッキ飲みして大丈夫なのか…心配になって吉良さんを見上げると、吉良さんも私をガン見して…見つめ合う私たち、という構図が出来上がった。
麗しいお顔がすぐそばにあって、さっき吉備須川さんに触られていた頬に、指先をあててみる。
うわぁ…目をそらさないし怒られない…!
それどころか、私の手に、自分の手を重ねてきた…!
これ、もしかしたらこのままキスする展開なんじゃないか…という場面…。
それが面白くなかったのか…吉備須川さんがムードをぶち壊すように言った。
「…ふんっもういいわよっ!タケっ帰るわよ?」
と言って、出て行ってしまった。
何だったんだ?吉備須川姉弟…。
………
「…なんでこの部屋に男を入れるんだよ?」
まだ私は吉良さんの胸の中。
2人になったことだし、ちょっと離れて話そうとしたけど…阻止されてしまった…。
「…勝手に入って来ちゃって…」
「…そんなの許さねー」
見上げれば、トロン…とした瞳にぶつかる…。
「…す、すいません」
小さくなって謝る私の手をバシッと取って…吉良さんは悪そうな笑顔になる…。
嫌な予感…
いや、嫌なことなんてない。
愛してやまない吉良さんの、私は言いなりなんだから…。
でも…。
「…そんなに悪いと思うなら、俺を風呂に入れろ」
…え?
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