13.

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本当に不穏なものを見つけてしまうとは。 もしかして今までも、あんな光景が繰り広げられていたのかもしれない、とさえ思う。 私が気づかなかっただけで。 それは、愛する吉良さんを信用していないということだけど、でも今…見てしまった光景を思う。 そして美麗ちゃんが私に言ったことを思い出した。 “2人で飲みに行った” “連絡先を教えてもらった” 結局それが本当なのかわからずじまいになっていたことに今さら気づく。 …だって、今までよりずっと吉良さんが近くなったって感じたんだもん…。 感じてた違和感を放置して見ないふりをしていたのは私…。   部屋に戻って、ベッドの前にパタンと座ったきり動けない。 ベッドに突っ伏したまま寝てしまったらしく、カーテンから覗く朝日がまぶたを照らして、目が覚めた。 昨日の光景が蘇る。 美麗ちゃんと、上着と、吉良さん。 美麗ちゃん、帰ったよね? まさか泊まってないよね? でも…どうして美麗ちゃん? 会社の人でも大学の同期でもなく、どうして美麗ちゃん? ここしばらくの間、吉良さんとの触れ合いが増えて、幸せに慣れてしまったのかな。 もし、夜だけ会いにくることが続いていたら、こんな事態を私は…どう受け止めたんだろう。 仕方ないって我慢した? 見なかったことにして、心の奥にしまい込んだ? たぶんね、今の私にはどっちも無理。 もう一度目を閉じると、私はその日、一歩も外へ出られなかった。 『今日どしたー?授業大丈夫なの?』 お昼頃、霧子からメッセージが入った。 大丈夫、だけど…明日は行かないとまずい。 それに…卒業を前にして色々やらなきゃいけないこともある。 『大丈夫〜!明日は行くよ』 と返信して、プツっと画面が黒くなったことに気づいた。 「…え?嘘でしょ…」 慌てて携帯を手に取り、あちこちいじってみたけど…黒い画面は戻らない。 …昨日地面に落として、故障したのかもしれない。 吉良さんに帰ったよメッセージ送らなくちゃいけないのに…。 そう思って、今日は部屋から出なければいい…って思う。 出なければ、帰ったメッセージする必要ないもん。 それに…出ればまた、あの2人を見ちゃうかもしれない…。 もう見たくない。あんな2人。 私に知られたくない悪いことをする時は、部屋を使わないって言ってたのに。 吉良さんの…バカ…。 結局1日何もする気が起きなくて、ウトウトしては起きて…を繰り返した。 気づけば日が傾いて、カーテン越しに部屋を照らしていた日も陰ってきた。 …また、夜になる。 今日は、眠れるかな…
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