13.

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…………… どんなに悩んでもお腹は減ると知った。 「…うぅ…寒っ」 いつの間にか季節は進んでる…。 コートの衿をぎゅっと合わせて、コンビニまで急いだ。 途中…吉良さんのマンション前を通る。 辛いから別の道を通りたかったけど、暗くなった住宅街を通るのは気がすすまない。 マンションは見ないようにして、コンビニに急ぐ。 思いついてあまり飲めないのに何本かチューハイも買って、足早にアパートに戻ろうとした。 …それなのに。 どうして…神様はこんなに意地悪をするんだろう。 帰り道、吉良さんのマンション前で、立ち尽くす美麗ちゃんを発見してしまった。 アレはきっと…吉良さんを待ってる。 私は、動けなくなった。 見たくないのに、寒いのに、早く帰りたいのに。 美麗ちゃんを捉えた目はどうしてもそこから離れてくれなくて、その後彼女が何をするのか見届けたくなった。 するとしばらくして、姿を現した吉良さん…。 仕事帰り…だよね。 美麗ちゃんに気づいて、どうするんだろう。 吉良さんに気づいて駆け寄る美麗ちゃん。 ためらいなく腕を取ったけど、吉良さんはさりげなくその手を離した。 マンション前でしばらく立ち話をして…吉良さんが裏に回ったみたい。 もしかしたら…。 何度か、乗せてもらったことがある、吉良さんの車。 確か初めて乗せてもらったのは、お正月実家に帰省するとき。 …やっぱりそうだ… 目の前に停まった車に、美麗ちゃんが笑顔で乗り込む。 私が初めて乗せてもらうときは、助手席に乗っていいのか迷ったっけ…。 降りる時は「何の助手もできなくてすいません…」って謝って笑われた。 そのうち運転する吉良さんのカッコよさに見とれて…そんな私に気づいた吉良さんに手を繋がれた…。 …お願い。 そんな思い出の車に平気で乗らないで…。 願いもむなしく、車は美玲ちゃんを乗せて、駅の方向に走り出した…。 私はその場にうずくまって動けなくなった。
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