13.

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……… 親切な女性に声をかけられて、アパートの近くまで送ってもらった。 何度もお礼を言ってから部屋に入って… 買ってきた缶チューハイを一気に飲んだ。 「…もう、やめよう…」 昨日の、美麗ちゃんと吉良さん。 今日の、美麗ちゃんと吉良さん。 見たことを整理して、納得して飲み込むなんて無理。 でも…吉良さんに面と向かって問いただす勇気もない。 だったらいったん、やめちゃえ…。 もうやめて、すべて手放そう。 私には、まだやらなきゃいけないことがある。 頑張った就活…卒業できなかった、なんてことになったら本気でヤバいの。 「…自分のことに、集中しなきゃ」 シャワーを浴びて、もう一本飲めないお酒を飲んで、その日私はちゃんとベッドに横になって目を閉じた。 ………… 「…あっぶなっ!大丈夫かよ?貧血?」 錦之助がフラついた私を咄嗟に支えて、心配そうに顔を覗き込んだ。 「…あ、ごめん」 昨日ほとんど何も食べられず、飲めないお酒を飲んだからか、朝からフラついた。 今日は出なきゃいけない授業がある。 心配そうな錦之助と別れ、講義室に行くと…いて欲しくなかった人がそこにいた。 「…あ!モモちゃん!ちょっと聞いてぇ!」 美麗ちゃん…。 何を言われるんだろう。嫌な予感しかしない。 「昨日吉良の車に乗せてもらっちゃった…!綺麗なもの見せてあげるって言って、ドライブに連れてってくれたの…」 そう…とは言ったものの。 …車に乗るところは見たけど、ドライブに連れて行ったかどうかはわからない。 それに、平日ドライブに連れて行くなんて…あの吉良さんが、信じられなかった。 それより…『吉良』って呼び捨てにするの、やめてほしい。 「あんまり興味ないみたい…!じゃ、そう報告しようかなぁ」 「…なにそれ?吉良さんに、何か報告してるの?」 とっさに詰め寄る私に、美麗ちゃんがしまった…という顔をした。 こんな言動、いつもだったら気づかないかもしれない。 美麗ちゃんは私の問いかけには答えずに、意味深な笑顔を残してその場を離れた。 ………… 「…今日だけ、お願い」 一緒にランチをしながら、霧子に今夜一泊させて欲しいと頼んだ。 「…もちろんいいよ!でもさ…」 私の憔悴した様子から、おいそれと理由を聞いてはいけないと思ってくれたみたい。 私がおかしいとしたらそれは、吉良さんに原因がある…一択なわけで。 「…まぁいいや。今は何も聞かない!ネトフリでホラーでも観て、一緒に寝よ!」 ありがたい。 霧子…恩に着ます…! 携帯が壊れて、帰ったメッセージができなければ、吉良さんから連絡が来る可能性が高い。 それでも連絡が取れなければ…部屋に来ることも考えられる。 今は…吉良さんに会いたくない。 どういうことなのか、問い詰めないといけないのはわかってるけど、今は何も言いたくない。 シャットアウトしたい。 3年間のお付き合いの中で、初めて思うことだった。 やっぱり…私じゃ役不足だった。 恋人じゃなくて、セフレに落ちてた。 飽きられた…。 そんなことをもしも語られたら、ショックすぎて死んでしまう…。 だから今は、会いたくない。
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