15.

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それから私は、ずっと後回しにしていた卒論に取り掛かった。 吉良さん一色だった私の大学生活の間で、一番勉強したかもしれない。 卒論が終わって、卒業見込みをもらえたら…吉良さんに向き合おう。 それまでどれくらいかかるかな… 今年最後の1ヶ月も終わりに差し掛かり、私は吉良さんに出会って初めて、たった1人でお正月を迎えようとしていた。 「…ねぇ!やっぱり私もこっちに残ろうかな…」 年末も卒論をすすめるため、実家には帰らないという私に、霧子が心配そうに言った。 「…何言ってんの?慧くん待ってるんでしょ?帰ってあげなって!」 慧くんというのは霧子の高校時代からの彼氏で、実家が近いらしく、毎年お正月は一緒に過ごしていると聞いていた。 私と吉良さんみたいだな…。 「慧はこっちにも来てくれるからいいんだよ?それよりモモのほうが心配…!」 私に抱きつく霧子。 さっきからハードグミをもぐもぐ食べながら話を聞いていた錦之助が口を挟んだ。 「…ダイジョブ霧子。モモの様子は俺が見てるから!」 そう言う錦之助をジト…っとした目で見る霧子…。 「…あんた、モモが吉良さんと別れたからって…さては狙ってるな?」 あ…。 まだ、別れてない。はず…。 「狙ってるとかないっしょ?それにモモはまだ…ギリ綾瀬先輩の彼女だよ?」 ギリ…。 確かに。吉良さんはまだ、ギリ私の彼氏。 「クリスマスもお正月も一緒に過ごそ!」 錦之助に人懐っこい笑顔を向けられて気持ちが和む。 霧子は私と錦之助に見送られて夜行バスに乗って実家に帰り、私は錦之助と遅めの夕飯を食べて帰ろうということになった。 「…ハンバーグ、だけでいいの?」 霧子同様酒豪の錦之助。 夕飯を食べる=居酒屋に連れて行かれる…って思ってたのに。 「もちろん。ワインもビールも飲まない!」 「はぁ?なに気を使ってんの?気持ち悪いから飲みなよ。どうせ我慢してるんでしょ?」 すすめてあげたのに、結局錦之助も私と同じハンバーグとソフトドリンクを頼もうとするから、私が気を使ってあげた。 「…ワインでも飲もっか?」 デキャンタで頼む?と聞いてみると、なぜかブルブル首を横に振って「とんでもない…!」と言われてしまった。 私と二人きりで酒は飲めない…と言われ、首をかしげているうちに、ソフトドリンクを注文されてしまった…。
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