16.

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「…携帯を持ちたくないのは、俺が原因だろ?だとしたらそれは、全部俺が悪いから」 だから、ごめんなさい…。 吉良さんが、ポケットから手を出して、姿勢を正して頭を下げてる… 「私こそ…ごめんなさい」 胸元に手をやって、ネックレスの存在と指輪に気づいてもらう。 「…せっかく買ってもらったのに、身につけたところを見てもらったこともなくて…」 言いながらコートのボタンを外して、ネックレスを見せた。 「…今のモネは、俺に包まれてるな」 眩しそうに目を細めて笑ってくれたから、ちょっと寄り沿いたくなった…。 神社を出て、なんとなく一緒に歩き始める。 「何祈った?」 歩きながら吉良さんに聞かれて、隠すことも忘れて素直に言ってしまった。 「吉良さんの健康と幸せを…」 言ってから、ちょっと恥ずかしくなる。 「…ブレないな」 見上げると、吉良さんは前を向いていたけど…だからこそ見えた。 耳が赤い…。 「…俺も、モネの卒論がちゃんと完成して、大学卒業できること、祈っておいたから…」 あ…ありがとうございます...と言ったところで、私のアパートについてしまった。 「あ…ちょっと、お酒を飲もうと思うので、コンビニに行きます…」 コンビニは吉良さんのマンションの近く。 もう少し、一緒に歩きたい…。 コンビニ前まで来て、吉良さんが言った。 「俺んち…酒余って、困ってるんだけど…」 吉良さんらしくもなく、ちょっと照れたみたいに、さりげなく視線を外して…言われてしまった。 「…じゃ、の、飲ませていただいていいでしょうか…」 フッと笑顔になった吉良さん…私の背中を軽く押して、マンションに向かった。
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