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「あの、美麗ちゃん…って」
私は横にいる吉良さんを見上げ、皆さんの顔をぐるりと見渡した。
「…あれ?吉良、言ってなかったの?」
憂さんが言う。
「…あぁ、まだ。」
微妙な空気が流れる中、私はテーブルに置かれたコップを手に取り、一気に飲み干した。
結構強いお酒だったのか、ぐわん…と目の前が揺れる。
「…私、見たれす」
「…ちょ、モネ?大丈夫か…」
心配そうに顔を覗き込む吉良さんの顔も歪む。
「…この部屋に、美麗ちゃんを連れ込んだとこ…」
自分の部屋のベランダから、吉良さんのマンションの玄関が見えること、そこで女の人を部屋に入れるところを見て、ここまで来たこと。
「…ベランダを見上げたら、それは美麗ちゃんで、吉良さんに上着干しておきますか?って聞いてて…慣れた感じで、吉良さんの上着を手にしてて…」
涙が目のフチにたまっていく。
その目で皆さんをぐるりと見渡して、まばたきをしたら、ポロポロっと涙がこぼれた。
「…うわ…。これ惚れちゃうやつだ…」
鬼龍さんが呆然として言う。
「あぁ、わかる…」
2人がうなずいたのをみて、吉良さんが焦って私を胸の中に閉じ込め「俺のだから」と牽制した。
「…違うれすっ」
ぐぐっと胸の中から起き上がって、吉良さんの顔を真正面からとらえて言った。
「…車に乗せるとこも見たれす…。美麗ちゃんが本命れすか?私は…?私はセフレか2番手れすか?」
…そこにいた全員がコケた気がする。
「…もう白状するしかねーだろ。吉良!」
憂さんに言われ、椎名さんに肩を叩かれている。
「わーった!言うよ、ちゃんと…」
見上げる私と目を合わせ、テーブルに肘をつきながら、落ち着きなく口元をいじる。
その仕草が妙に色っぽくて、見とれてしまう…
「夏頃、親しくしてた助手の先生に呼ばれて、大学に行ったんだよ。その時、モネを見かけて…」
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