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人生初だった。
今まで頼まなくても女子が群がり、告白めいたことをされてきた俺は…はじめて彼女たちの気持ちがわかった気がした。
チャンスを伺っていたところに、開催された学祭。
これまでの経験から、人混みに行けば必ず女子に捕まる。
そして飲み会だのご飯だのお茶だの誘われて、行くと言ってないのに連れ出されることがほとんどだった。
だから警戒して学祭なんか行ったことなかったが、もしかしたらこれが最後のチャンス…
モネを見つけた時は、ドクン…っと、心臓が跳ねたのを感じた。…2回目だ。
ピョンピョン飛び跳ねて楽しそうなモネに、誘われるように近づいた。
ぶつかって来たときは、正直チャンスだと思った。
どうやら少しだけ女子ウケする顔面らしいと自覚があった俺は、これ見よがしに髪をかきあげて…アピール。
モネがじっと俺を見て動かなくなったから…内心ガッツポーズだった。
あれから3年…最近思う。
モネを思う気持ちが溢れすぎていたくせに、ずっとそんな気持ちをうまく伝えられなかったと。
そして、それを放置してきたと。
自分なりに…節目や行事のときは、頑張ったつもりだったが…そんなことより日常のほうが大切だったと知る。
胸の中にいる彼女。
安心しきって目を閉じる寝顔を見下ろして、おでこに口づける。
「モネち…かわい…」
寝顔には言えるのに、面と向かってこんなセリフは言えなくて…超絶口下手で照れ屋の俺は、いろいろ誤解されていたようだ。
3年も付き合っていれば、世の中のどんなカップルも…いろいろある。
俺たちには、そのいろいろが極端に少なかった。…たぶん今回が初めてだ。
それは、実はモネの我慢のうえに成り立っている付き合いだったから、と気づかされた。
いつも健気なモネ…
3年前よりさらに熱っぽい目で俺を見上げるモネ…
愛しくて愛しくて、一周回って冷たい態度になっていたと知ったら、さすがに嫌われるか…。
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