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「おやすみなさい」
私から連絡するのは控えて…と言われていたのに、うさぎが布団で寝ているスタンプと一緒にメッセージを送信したことがあった。
後に吉良さんに『どうでもいいメッセージ』なんて言われてしまったけど…
確かにこれから寝る宣言のメッセージなんて、面白くもなんともないと、今なら激しく同意する。
でもこのときはただ、やり取りをしたかっただけなんだ。
おやすみ…に、おやすみが返ってくるだけのやり取り。
今ならそんなメッセージを送って、吉良さんの貴重な睡眠時間を削ってはいけない…としか思わないけど…。
あの頃は…
恋人になった証…みたいなものが欲しかったのかもしれない。
…当時錦之助に、理工学部の院生たちの様子を探ってくれるよう必死に頼んで、どうやら卒論が完成した先輩たちが続出しているらしいと聞いた。
そこで思い切って送信したメッセージだったんだけど…
ずっと、既読はつかなかった…。
朝起きて、やらかした…と思った。
「おやすみなさい」というメッセージは、朝になったら何の意味もない。
既読がついていないのをいいことに、メッセージを取り消そうと操作しようとした瞬間…
ついた既読。
ぽん…と送られてきたスタンプに、アプリ開きっぱなしの私の既読はすぐに付いただろう。
その瞬間、携帯がにぎやかに鳴り出した。
画面に光る…吉良様…という文字…
「…いやぁっ…!」と短く叫んでベッドの上に放りだしてしまった。。
まさか電話がかかってくるなんて…!吉良様からの電話なんて…。
どうしようと見つめるも、無視なんてできっこなくて、震える手で着信に出た。
「…出るの遅くない?」
「す…すいませ…」
不機嫌そうな声に焦って、私は思わずその場で立ち上がり、不安定な足元によろめいた。
ヤバ…ここベッドだった…と思ったときはすでに遅く…
「…ひゃあ…っっ!」
バランスを崩した私は、携帯を耳に当てたまま叫んでベッドから落ち、けたたましい物音を吉良さんに聞かせてしまった。
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