《呑みすぎ》

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《呑みすぎ》

 バーで祝い酒と迎え酒をたらふく呑んだカイラはペースを守らずに度数の高いカクテルやらキンキンに冷えたビールを吞んでいた。  ビールは普段吞んでいるのよりクセがあるものの、程よい苦みが味を引き立たせてくれている。ドルがあっまいカクテルばかり呑んでいるが、カイラは自然とビールを呑んでは口端の泡を拭いていた。 「嬢ちゃんがビール好きだなんて、おっさんみてぇだな。まぁ俺も親父だが」 「この世界に来る前はおっさんだったんだよ。まぁ、マスターよりかは若かったけどな」 「ははっ。面白れぇこと言う嬢ちゃんだな。……ドル、もう一杯いるか?」 「いや。結構、度数の高いお酒呑んじゃったからやめておくよ。二日酔いはごめんだね」  ドルは「ご馳走様」などと言ってはマスターが合間に出してくれるカシューナッツやらマカダミアナッツの盛り合わせを優雅に食していた。  もちろん、チーズの盛り合わせも添えてある。それはサラミと共にカイラも奪うように貪っていた。  カイラがビールを呑みながらサラミを食いちぎる様子にドルはクスリと肩を揺らす。 「あ、なんだよ? 幻滅してくれたか?」 「いーや。男らしい女の子は大好きだよ。そのままお持ち帰りしたいぐらい」 「おいおい、ドル。手が早すぎるんじゃねぇか? まぁ、こんな可愛い嬢ちゃんが抱けるなら……そうもなるか!」 「マスターは想像が早すぎるよ。俺はお持ち帰りして、カイラの可愛い顔を見たいだけさ」  どっちにしろ変態発言をしているドルにカイラは漂う頭の中でビールをたらふく呑んだ。酔っ払いの美女の谷間が振動で揺れる。 「ははっ。やっぱりお前も男じゃねぇか~。いいぜ? でも、ヤラれる前にお前の股間嚙み千切って逃げてやるからな~」  ビールを煽ぐカイラにドルはカマンベールチーズとナッツを食べる。そしてまた肩を揺らした。  カイラは意味がわからないようだ。 「そんな状態で言ったって説得力がないんだけどね」 「うるせぇ、ばーか」 「ははっ。まぁ二日酔いにならない程度で呑んでよ」 「当たり前だ~。ばーかぁ!」  べろべろに酔っぱらっているカイラはその後、記憶を無くすほど酒に溺れた。  翌朝。気が付くと自分はベッドに居た。 「いっつぅ……、あたまが、ぐらぐらする~」  起き上がり頭を抑えるカイラではあるが、自分の服装が変わっていないことに気が付いた。ドルはこんないい女を抱かなかったのだろうか。  酒の勢いで致すことは通例だが、無駄に美青年な顔つきをしたドルは論外らしい。 「……へんな奴」 「なんか言ったぁ~?」 「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!! びっくりしたっっ」  仰け反って頭を抑えるカイラに黒のパジャマを着たドルは口端を綻ばせた。そしてコップに入った水と薬を手渡す。 「はい、二日酔いの薬ね。マスターのおススメだからすぐに効くと思うよ」 「う……うぅ……、サンキュー……」  だが二日酔いの薬を飲んだがあまりにもマズすぎて吐きそうになったのは言うまでもない。  これからは自重しようと、タダ酒でも吞まれない方が良いとカイラは頭が痛む身体でベッドに寝転んだのだ。
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