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その日から僕の頭の中には先輩の腋の黒いものが渦巻き、先輩の前では平静を装うが先輩の離れた瞬間、頭を抱えてしまう。
「あーー! 僕、最低だ!」
教室の机で声をあげるとクラスメイトの大樹は隣の席でため息を吐く。
「くだんねぇ」
「くだらないのなんて分かってるよ! でも気になるんだ!」
反論する僕に大樹はまたまた大きなため息を吐く。
「脇毛はないはずだとか、すね毛は生えてないはずだとか、あさひの思い込みだろ? 大体俺ら高校生なんだから成長期なのよ。ゆうと先輩がこれから身長が180センチ越す可能性だってあるし、体毛濃くなる可能性もあるだろ? そうなったら、あさひはそれが理由で別れんの?」
「別れないよ! 絶対やだ! めっちゃ大好きなのに!」
「じゃあなんで腋毛くらいで気にしてんのよ? これからお付き合い深めていけば、他に気になるとこも出てくるんじゃないの?」
「そうだけど……」
大樹の言っていることは正論だ。だけど正論で感情が納得する訳じゃないんだ。万が一、腋毛だとしても、しっかりしているゆうと先輩がケアを怠るとは考えられない。僕だって、もしゆうと先輩と関係が深まることを考えて脱毛をしている。ゆうと先輩に不快な思いをさせたくないから。
「まぁ俺には関係ない話だから勝手なこと言うけどさ。今のあさひ、ゆうと先輩に対して失礼じゃないかい?」
何も言い返せなかった。もし、もしもだ、腋毛だとしても、それが腋毛だと分かったなら僕も納得できるだろう。でも、腋を見せてくださいなんて変態的でお願いできない。ゆうと先輩のことだから、笑ってオーケーしてくれそうだが、その状況は僕が耐えられない。恋人としての評価も下がるだろうな。
「あーー! どうすれば!」
僕の悩みも知らずにチャイムは鳴る。僕とゆうと先輩が恋人なのは学校中に知れ渡っている。変な悩みを患っているのは、おそらくクラスメイトしか知らないが、そのクラスメイトたちの視線は贅沢な悩みだとばりばりに言っている。そんなの僕が一番分かってるよ!
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