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 六月最初の日曜。ゆうと先輩とのデートの日。毎週、日曜は一緒に過ごすことにしている。一緒にいるのに、先輩は袖の長い服ばかり着てくるので、腋の黒いものの正体はまだ分からない。今日も先輩は袖の長いシャツを着ている。 「先輩、半袖着ないですね?」  探りを入れる意味もあったが純粋な興味からパフェを口に運ぶ先輩に聞いてみる。今日の目当てはスイーツのはしごだ。 「そりゃあ袖の長いほうが可愛いからね。あさひの前じゃ可愛くいたいもん。萌え袖もできるからさ」  あざとい……。でも、それがいい。ゆうと先輩は誰が見たって可愛い。その先輩が僕の前じゃ可愛くいたいなんて鼻血が出そうだ。 「流石です。他に可愛くいるために何かしてることありますか? 僕も参考にしたいので」 「ん〜。肌のケアはしてるし、日焼け止めはもちろん塗ってるし。脱毛もしてるよ」  きた! と思いつつ、直球にならない言葉を僕は選び出す。 「先輩は体毛薄そうですけどね」 「そうだね。生えてもうぶ毛くらいだけど。そんなの付き合っていけば、あさひも知っちゃうんだけどね」  あれ? じゃあ腋のあれは何なの? どうしたら確認できるのかな?  美味しそうにパフェを頬張る先輩は何にも気にしていないようだ。 「でも、あさひも体毛薄いじゃん? 脱毛してるとしても薄いよね」  なぜか、体毛の話が続いてしまった。確かに僕も体毛は薄いほうだけど、先輩ほどじゃない。大体、脱毛はじめたのも先輩に告白するためにしたことだし。 「……一応、エチケットとして……」  先輩はにっこりと満面の笑みを向けてくる。 「あさひのそういうとこ、好きだよ。僕を不快にさせないためにしてるんだよね? でもどんなあさひでも僕は受け入れるからね」  先輩の言葉をつい深読みする。いや深読みしなくても恋人同士なんだから、いつかはお互いの肌を見ちゃうこともある訳で。 「ちなみにあさひが僕にして欲しいことってある?」  心臓がばくんばくんと高鳴った。落ち着け僕! 先輩が言っているのは、そういう行為のことじゃないだろ! 
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