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 先輩にバレないように呼吸を落ち着かせて、改めてチャンスだと思い直す。 「先輩の半袖見てみたいです。先輩の半袖、学校行くときしか見ないから」  先輩の腋をじっくり確認できないのは、一緒にいるのが登下校の時間だけだということだ。僕の寝グセを直す瞬間にじろじろ腋を見るのも失礼なので、確認する以外ならそれ以外でやるしかない。 「いいよ。来週着てきてあげる。来週は何する?」  先輩はあっさり了承してくれる。本当に僕のことを大切にしてくれている。僕自身も無理なお願いなんてしないけど、大体のお願いは聞いてくれる。それなのに僕はくだらないことを気にして愚か者だ。分かってるんだ。  あの黒いのが腋毛だったとしても、僕はちゃんとゆうと先輩が好きだ。それだけは変わりようのない事実だ。先輩の身長が伸びても体毛濃くなってもちゃんと愛する。その自信は間違いなくある。  翌週の日曜。僕は寝不足だった。先輩の腋が気になって眠れませんでしたなんて口が避けても言えない。今日はボーリングの予定だ。そして今日ははじめて先輩の家に先輩を迎えに行く。上がる訳ではないけど緊張はする。だって親御さんに会うかも知れないのだろう?  カチコチに緊張しながら、先輩の家の前まで行くと玄関先で先輩は待っていた。 「あさひ!」  相変わらず先輩はキュートだ。今日はノースリーブ。本当に袖の短い服だ。先輩は右手をあげて僕に手を振る。つい腋に目線が行ってしまう。あの黒いものがあった。右の腋。  そこには確かに黒いものがあった。 「……右の腋にあるのって……」 「ん? これ、ホクロだよ。変なとこに大きいホクロあるから気になっちゃうよね」  あははと笑う先輩。 「もしかして腋毛だと思った? もし生えてたとしてもあさひと一緒にいる日にケアしない訳ないじゃん?」 「先輩!」  つい僕は先輩を抱き締めてしまった。 「ごめんなさい! 本当くだらないこと気にして!」 「なんの話?」 「なんでもないです! 僕、どんな先輩でも好きです!」 「変なあさひ。僕もどんなあさひでも好きだよ」  僕らはまだ付き合いたて。これからもくだらないことで悩んじゃうだろうけど、なんとかなる気がする。何があっても結局大好きに落ち着いちゃうだろうし。  そうやって幸せオーラ振り撒いてやるんだ。周りがやっかむくらいの幸せオーラをさ。
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