わがままは青い空の下

『愛してくれる人』

『もう、連れ戻されることなんて無いよ』
　エレベーターの下に降りるボタンを押して、ギュッと手を繋いだままジュディーが振り返って笑った。
『僕は君がいないと生きていけない。他のものなんて必要ない。君だけが欲しいんだ』
『ジュディー……』
　他のものなんて必要ない。
　彼がどうやってここに来たのかを理解した。
　きっと、全てを捨てて来たんだ。
　家出同然で。
　だから、出国にも手間取ったし、時間がかかったんだ。
『ジュディー。今ならまだ間に合う……』
『間に合う必要なんてない』
　扉の開いたエレベーターに乗り込む。落としそうになった空也から渡されたカードを取られた。
　それを確認して、『本当に何も無いから』と笑った。
『僕を……養って』
『はぁあ？』
　ジュディーの言ったことが理解できなくて、声が裏返った。
　ジュディーはニコニコと笑いながら、『こっちに着いてからは殆ど野宿だったんだ』と笑い、『臭う？』と聞いた。
　マンションから駅まで歩き、そこでタクシーを拾うと僕の住んでいるキース家の別荘まで一緒に帰ってきた。