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『失恋と出会い』
「僕だって好きだったのに」
バルコニーに持たれてため息をついた。
湖の縁に立つその古城は今日の主賓の自慢の屋敷だ。大きく湖に迫り出したバルコニーは広く、テーブルも置かれているが、明るく照らされたそこには座る気にもなれないほど、気分は暗く沈んでいた。
足元まで届く広間の明り。
広間では着飾った男女がダンスを踊ったり、ワインを片手に談笑している。
誰もが笑みを称え賛辞を述べている。
そこに相応しくない暗い顔でため息を繰り返す。
交友関係の広い父に付いてやってきたパーティーは今日の主賓の一人娘の婚約披露パーティー。
そう。僕の大事な恋人の婚約披露パーティー。
そして、僕は婚約者ではない。
何度か睦み会い偲び逢っていた。大学が一緒で、他の女の子たちよりも仲が良かった。
そう、他の女の子達よりも。
だから、『特別』だと思ってもいたのに、いきなりの婚約披露パーティーには驚いた。
彼女の相手は伝統ある名家の跡取り。僕なんかでは足元にも及ばない。
これほどまでの古城を持っている彼女もそれなりの名家ではあるが、まあ、『玉の輿』に乗ったのだ。
僕に乗っていたはずなのに……。
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