0人が本棚に入れています
本棚に追加
ルキアは最初薄情な印象を抱く登場人物だが、やがて失策を意図せずとも重ねるカルエを見捨てない。また、彼女はその冷酷なように見えて献身的な性格で人気をかっさらっていった。主人公に対するヒロインでもないのに、人気投票で第8位に入るほどだ。
「……。本当にどうしたの? 顔色がかなり悪いわ」
こちらを心配そうに覗き込むルキア。可愛いなぁ。天使のように美しいって地の文での表現は本当だった。
そんな感じでとぼけていれば、ますますルキアが心配の表情を強めていく。そしてこんなとき、カルエは決して弱さを見せない。
「いや……。くだらない運命なんてひっくり返してやろう、って決めただけさ」
噛ませ犬に生まれ変わってしまった少年、基カルエ・キャベンディッシュ。まず自らが乗り移ったと思われるカルエのスペックを再確認するべく、ルキアへ訊く。
「とはいえ、悪夢が鮮烈過ぎて別世界に入り込んじまった気分だ。色々確認しておきたい」
「なにを確認するの?」
「まずウィング・シティという箱庭、いや、おれたちの街だな。この街を一言で言うと?」
「そんなにひどい夢を見たの? まあ良いわ。一言で表すのなら、『世界最悪の街』ね」
「だよな。『夢が眠る街』とも言うけど。んじゃ、おれとルキアの立ち位置は?」
「貴方はランクB。私はランクCね」
「それだけじゃ説明不足だよ。誰かに説明するつもりで言ってくれ」
「注文が多いわね……。ランクというのは装着できるギアの数と質で計算されて……ああ、ギアというのはウィング・シティにしかないSDカードみたいな物体で、いや、そもそもギアを挿すためには身体の改造が必要で……。はあ。日が暮れても良いのならちゃんと説明するわ」
ルキアは拗ねてしまったようで、ノートパソコンに向かい始めた。いきなり推しキャラに生まれ変わって困惑する少年の表情は見られなくて済むわけだ。
(身体の一部改造が流行ってる、いや、改造しなきゃ誰かに食われる街。ぼく……おれは右腕と両足を改造してて、機動力が最大の売り。でも、この段階だとギアすら持ってないはず)
試しに腕を見てみる。ギアを装着できるスロットには当然もぬけの殻だった。
(ということは、まだ本編に登場してないのか。カルエはギアを獲得するところが初登場だもんなぁ)
最初のコメントを投稿しよう!