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カルエの初登場。それは痛烈なものだった。主人公たちを蹴散らし、目的のものを手にして去っていく。なお、このとき彼らにトドメを刺しておけば後々苦戦することもなかったのに、と語られていた。
「ねえ、あ……なあ」
「……。やっぱり貴方オカシイわね。誰かと入れ替わったみたいな態度だし」ルキアは顔をグッと近づけ、「ウィング・シティには人格が込められたギアもあるわ。埋め込まれてないわよね?」と強めな語気で、しかし弱気な表情で言う。
「…………。大丈夫。おれを誰だと思ってやがる? 世界最大のチャンスを獲る男だぞ」
カルエらしい傲慢な言い草に、ルキアは胸をなでおろす。
「良かったわ。これからルーキーどもが手にしたギアを強盗するんだから」
(やっぱり作中に出てくる前の話なんだ)
「どうしたの? さっきの覇気がないわ」
「いや……その作戦を見直したいんだ」
「え?」
「おれが駆け出しに負けることなんてあり得ないけど、手に入れられる報酬がしょっぱい。それに、当局はおれのことを逮捕したがってる。ここでアイツらと対峙したら損しそうなんだよ」
カルエは初登場時、主人公とその仲間を圧倒する。そこまでは良い。
だが、その結果主役たちに覚醒イベントを与えてしまう。しかもカルエは一度目の敗北──警察機関のあるキャラに逮捕される。そしてその劇中人物に敵う術を現状カルエは持っていないのである。
つまり、現状この世界の主要人物たちと関わらないほうが良いという結論に至るわけだ。
「じゃあ、貴方はどんな作戦を望むわけ? 行動起こさないといつまでも貧乏暮らしよ」
「叩く相手を変える。オルタナっていうヤツに」
「オルタナ? 聞いたことないわ。どこの小物よ?」
「アイツらと同じくルーキーさ。悪党どもとつるんでかなり良い暮らししてるって話だ。そのガキを叩く。そしてヤツの持ってるギアとカネはおれたちのもの。それで良いだろ?」
「随分容量の大きいギアを持ってるのかしら? その口振りだと」
「そうだな。一生物だよ」
疑念ばかり抱いているルキアを尻目に、カルエは棚から拳銃を二丁取り出す。至って普通の『M2011』というセミオートのハンドガンである。ルキアにそれを投げ渡し、銀髪に碧眼の少年カルエは自ら選んだ流れに乗る。
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