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「なんのギアを装着するつもりなの?」
「相手の能力を無効化する能力が付与されるギアだよ」
本編でオルタナが成り上がる理由、それはこのギアによる力が大きい。全身を改造し相手の能力を無効にできる力を手にしていれば当然ではある。
そして、ギアという外部強化装置に付き物な正気度の低下もすくない。理想通りの機械というわけだ。
「そんなふざけたギアがあるの?」
「あるよ。まあ、能力限定ではあるけど」
「すでに右腕と両足を機械化してる貴方がその力を持ったら、ほとんどすべての敵性が敵わないんじゃないの?」
「そうだろーね。というか、そうであってほしいね」
「……?」
「やー、とりあえず渡したギアつけてみなよ、ルキア」
「え、ええ」
ルキアに渡されたギア、こちらもまた原作で大活躍する。本編を100回以上見たカルエ、基、彼の中に入り込んでいる少年ならば痛いほどに分かる。これがどれだけ良いギアか。
「えーと……『シックス・センスVer3.5』? ……インストールを開始。うわ、目の前が真っ暗に──」
「いきなりギアをインストールするなら、多少の荒療治にはなるわな」
(シックス・センスは作中最後のほうまで活躍する低コストのギア……。やっぱオルタナは裏主人公的な側面もあったんだな)
これだけ有能なギアをふたつ保有していたのだから、たしかにオルタナは裏社会の頂点にもっとも近い男だったわけだ。
「インストール、終わった?」
「…………。感覚が強化されすぎて気持ち悪いわ。幻覚剤をオーバードーズするとこうなるのかしら?」
「そのうち慣れるよ。おれも最初は大変だったし」
オルタナの邸宅から出てきたふたりは、真っ暗な住宅街を歩く。都市の経済破綻によってインフラがろくに行き届かない街、『ウィング・シティ』。街灯がまったく灯っていないことからも、この街の闇を増させる。
ただ、推しキャラになれた少年に闇夜の怖さなど通じない。カルエの人生をどのように変えていくか、どうやって安寧な暮らしを成し遂げるか。そればかり考えてしまい、一度死んでいることは気にも留めない。
「さてと、始めますか。世界最大のチャンスを掴む男の英雄譚」
*
「所長! オルタナのブタ野郎が射殺体で発見されたとの情報が──」
ウィング・シティ第3警察署の所長室はコーヒーの匂いが充満していて、腹がゆるくなりそうなほどだった。
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