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「知ってるよ、この野郎」
「あのブタ野郎、おれたちとの武器取引を死に逃げで棚上げしやがった!! 殺ったヤツを潰さないと警察のメンツ丸つぶれですよ!!」
「落ち着け。もう目処はついてる」
物語上カルエと闘うはずだった所長アラビカは、本日10杯目のコーヒーを部下へ差し出した。
「犯人はカルエ・キャベンディッシュだ。ただ、アイツを潰すには武器が足らん。だからこそのオルタナとの取引だったんだがな」
苛立ちながら、アラビカはコーヒーを流し込む。
「カルエ・キャベンディッシュ……。ランクBの無法者ですか?」
「ああ。最近躍動してる義賊気取りの野郎どもがいるだろ? アイツは、ソイツらを襲うつもりだったようだ」
「なぜそんなこと知ってるんです?」
「アイツらの動向を追ってたら嫌でも分かる。カルエ・キャベンディッシュはいまのところあまり目立たねェが……後々厄介になるのはヤツのほうかもしれん」
「ランクBのギアも持ってない半端な悪党が?」
「これでも不良を見極める審美眼は良いほうだと思うが? というか、そうでなきゃ生き残ってないし、薄給でこんな激務こなす意味がなかろう」
*
カルエとルキアは隠れ家に戻ってきていた。
(こんなにもトントン拍子に進むとは、予想外だね……)
カルエの中の少年は、これからの計画を立てるために頭を巡らす。今しがた強奪したデバイスと、カルエに入り込んだ少年が持つ、この世界への知識が組み合わされば、次の一手は簡単に思いつく。
ただし、すでに原作を改変している以上、ここから先は未知数だ。
「さて、次はどうするつもり?」
ルキアが尋ねてきた。彼女はまだシックス・センス慣れていない様子だったが、すこしずつ普段通りの落ち着きを取り戻しつつあった。
「そうだな……、まず、この街の勢力図を再確認したほうが良いかな。オルタナが消えたことで、すこしばかりバランスが崩れたはずだ。なら、早めに手を打っておこう」
「具体的には?」
「情報を集めよう。ウィング・シティの裏側でうごめいてる連中の動向を掴むんだ。情報屋を使うしかないな」
「この街で信用できる情報屋なんているの?」
「すくなくとも、ひとりくらいいるさ」カルエは手を頭の後ろに回し、「レイ・ウォーカーとかね。彼はカネさえ払えば、なんでも教えてくれる」
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