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そんな姫子の様子を見て、男性たちはほれみたかとばかりににやにやとした笑みを浮かべる。
「現状連絡が取れるのがお前だけである以上、お前が金を返すということになるな」
「……っ」
先ほどから見ないようにしていた借用書に、視線を向ける。
借りた金額は【一万円】とある。……到底、姫子の稼ぎでは返せない。何年……いや、何十年かかっても返せないだろう。
「そんな大金……私には」
ぎゅっと手のひらを握って、顔をそむける。
そもそも、姫子の実家は没落華族なのだ。両親亡き後、財産はすべて伯父夫婦に食いつぶされてしまった。挙句、追加で借金もこさえて……。
「俺らの知り合いに、いい働き口があるんだ。……そこで働けば、これくらいの金額は数年で稼げるだろうな」
彼らは『いい働き口』というが。姫子にはなんの技能もない。それすなわち――まぁ、いわば身売りなのだろう。そもそも、年若い女性が短期間で稼げる仕事など、それしかない。
「地道にこつこつ返してもいいけどよ。……このままだと、利子で借金の額が膨れ上がるだけだと思うんだけどなぁ」
姫子の背後の壁に手をついて、男性の一人がそう囁く。
……それは、間違いない。だが。身売りなんて、したくない。
「それに、借金が終われば、お前は自由の身になれるんだ。……悪い話じゃないだろう?」
それはこの男性視点で、だろう。姫子にとっては、悪い話でしかない。
そもそも、伯父に借金を押し付けられた時点で、悪い話しかない。
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