第1章

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「この女は、俺が連れて行く」  そして、男性ははっきりとそう告げた。  意味が分からなくて、姫子はぽかんとする。いや、借金取りの男性たちも呆然としているようだ。  ……それに、少しだけ安心できた。 (このお人は、お二人の仲間ではないのね……)  が、それならば今度は違う疑問が浮かぶ。どうして、この男性は姫子を助けようとしているのだろうか。 「おい、勝手なことをされたら困るんだよ!」  借金取りの一人が、男性に掴みかかる。危ないと思って、咄嗟に姫子は目を瞑った。  ……でも、聞こえてきたのは借金取りのほうの悲鳴。それと、誰かが地面に倒れるような音。 「俺はなにも、この女をただで引き取ろうとしているわけではない。……どうやらお前らは大層せっかちなようだ」  静かな抑揚のない声。心臓が縮こまるような、恐ろしさも感じさせる。  ……だけど、どうしてなのだろうか。  姫子は彼を知っているような気がしてしまうのだ。 「ところで、この女の作った借金はいくらだ?」  男性が、もう一人の借金取りにそう問いかける。彼は若干震えた声で、金額を紡ぐ。  【一万円】と。
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