第2章

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 ◇  和史の言葉に、姫子は目を見開いた。  まさか、謝られるなんて予想もしていなかったから。 (それに、おじさまのことは全部私の問題なのに……)  和史に関係のあることではない。  そう言おうとしたのに、口が動かない。わなわなと唇を震わせて、和史を見つめた。  彼は姫子を見つめている。じっと、ただまっすぐに。その眼差しには、幼い頃の面影がある。  心臓がぎゅっとつかまれたような感覚に襲われた。 「い、いえ、これは、私が……」 「……お前がそう思っていたとしても、俺は謝らなくてはならない。悪かった」  和史がそう言って、軽く頭を下げてくる。  姫子はもう、なにを言えばいいかわからなかった。その所為で、息を呑む。  涙を必死に拭った。とにかく、今はこの涙を止めなくては――と。 「ご、ごめんなさい、和史、さん……」  震える声で謝罪をする。彼はなにも言わずに、ただ姫子の背中を撫でてくれた。  その触れ方も、撫で方も。全部幼い頃のままだ。 (彼は変わってしまわれた。そう、思っていたのに)  彼自身も、自分は変わったと思っている。でも、その奥底にはやはり幼い頃の和史が残っているのだ。  姫子はそれを実感して、ぐすんと鼻をすする。 「泣き顔は、あの頃のままなんだな」  ぽつりと零された言葉は、姫子の耳にしっかりと届いていた。けれど、なにかを返すことはなかった。  和史の手のひらの心地に意識を集中させて、涙を引っ込めることを最優先としたためだ。
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