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「俺が悪かったんだ」
「い、いえ、そんなことは……!」
決して和史の所為じゃない。これは、姫子が弱いから起きてしまったことで――。
「だが、お前を泣かせたのは俺だ。……俺がなにも悪いとは思えない」
少し気まずそうに、彼がそう言う。……このままどちらが悪いか、責任を奪い合っていてもいいことはないだろう。
「そう、ですね。では、二人とも悪かったということで……」
結局、こうするのが一番の解決策だと思った。だから、姫子はそう言う。和史は一瞬だけぽかんとしたものの、頷いてくれた。
「じゃあ、そういうことにしておこう」
彼の表情が和らいだように見えるのは、気のせいじゃないはず。
「……両親への顔合わせの日程は、正式に決まり次第連絡する」
「は、い」
「大丈夫だ。……きっと、なんとでもなる」
姫子が抱く不安を和らげるように、和史が姫子の手を取ってくれた。ぎゅっと握られると、なんだか胸の奥がざわざわとする。
(なんだか、少し距離が近くなった……よう、な?)
気のせいじゃなければ、そうだと思う。
そう思いつつ、姫子はそっと目を伏せていた。
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