第1章

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「さて、これでお前の所有権はあの男たちから、俺に移った」 「……ぁ」  男性が姫子の手首をつかむ手に、力を込めた。痛くはない。でも、逃げられないと悟らせるには十分すぎる力だ。 「とにかく、ついてきてもらおうか」 「あ、あの、あのっ!」  このまま流されて、いいのだろうか。  頭の中に浮かんだ疑問。それに従うように、姫子は男性に声をかける。 「その、どうして、私のことを助けてくださったのですか……?」  それに、多分ではあるが。あの巾着の中にはお金が入っていたのだろう。そうじゃないと、借金取りが素直に引くとは考えられない。 「どうして? お前はおかしなことを言うんだな」  彼は姫子の疑問をおかしなことと言うが、かなりの大問題であろう。  そう思うのは、姫子だけなのか。 「お前は朝霧 姫子だろう? それだけで理由は十分だ」 「……っ」  どうして、彼は姫子の名前を知っているのか……と、疑問を抱くとほぼ同時だった。  男性が、姫子の顔にぐっと自身の顔を近づけてくる。その黒曜石のような目が、姫子を射貫いた。 「それとも、お前は俺のことを忘れたのか?」 「……ぁ」  自然と声が漏れた。 「忘れたならば、思い出させてやろう。俺は――月橋(つきはし) 和史(かずし)。お前の、幼馴染だろう?」
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