彩花の幸せ

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彩花の幸せ

「そういう女って、どういう女だよ。体で稼いでた訳じゃないだろう?」 「そんなことしてない」 「だったら、ただ恋愛経験が人よりちょっと多かっただけだろ。俺が良いって言ってるんだ。俺のものになれ。幸せにするから」 「でも……」 「きょうから他の奴と付き合ったりしたら許さないけどな」 「そんなことしない。……私なんかが幸せになっていいの?」 「早崎 綾と張り合って傷付いたのは、結局お前なんじゃないのか?」 「でも、きっと綾も傷付けた」 「彼女は今頃、幸せになってるよ。お前は自分のことを考えるんだ。この先、新しい出会いもあるかもしれない。でもその男に全部告白出来るか? それとも全部隠して騙したまま付き合うのか? 悪い噂は、どこからでも耳に入るもんだ。俺なら、そんな心配しなくていいだろう。お前の何もかも全部を知ってるんだからな」 「雅也、私を本気で生涯ずっと愛してくれるの?」 「そう言ってるだろ。信じないのか?」 「……信じたい」 涙が零れた。 「昔の過ちも全て認めて、これからは二度と繰り返さないように、新しい気持ちで生きていけばいいんだよ。人にはそれが出来るんだと思う」 「私、雅也の傍でなら生まれ変われる気がする」 「そうか。幸せになろうな。俺の彩花、愛してる」  唇が重なった。それだけで彩花は幸せだった。雅也の何もかもが愛しい。 「今夜だけで七年分愛し合うのは、やっぱり無理だな」  そう言いながら雅也は彩花の甘い体の全てを堪能した。彩花は優しく責められ続けて喘ぎ声が嗄れるまで快楽に溺れた。  そして翌日、彩花の両親に結婚の承諾を貰った。  雅也は大手スーパーの副支店長として静岡に赴任していた。順調に店舗が軌道に乗ったら、また次の新店舗開店に向けて転勤になる。  彩花はそれも良いかもしれないと思っていた。この町は、やはり彩花には、ちょっと息苦しかったから。    両親は彩花の結婚を諦めていた。事実だからこそ、あんな噂のある娘が嫁に行く事などないと覚悟していた。  彩花の両親にとって雅也の申し出を断る理由などなかった。 「あんな娘ですが、宜しくお願いします」  両親は深々と頭を下げた。 「はい。必ず幸せにします。安心してください」 雅也は笑顔で答えた。  翌週末、雅也の実家に彩花を連れて行った。両親も兄夫婦も、大歓迎してくれた。  漁師の息子などと簡単に言っていたが大きな船を持ち、人を使う、地元では知らない人のいない名士の家柄だった。
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