綾 (あや)と彩花 (さやか)

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綾 (あや)と彩花 (さやか)

 オフィスビルの七階から十階が私 早崎 綾(さざき あや)の勤める商事会社。 今年で二年目。秘書課の仕事にも慣れてきたところ。  同期入社の女の子たちとは少し距離を置いている。大学でも一緒だった春野 彩花(はるの さやか)は営業部。彼女と関わりたくないから、そうしてる。    昨夜、あの男が言った私の良くない噂の出処は間違いなく彩花だから。大学の時も私が想いを寄せていた先輩をあの女に奪われた。    彼女は、やや小柄でGカップのバストが自慢。まるでグラビアアイドル。しかも童顔だから子供っぽい笑顔で男心を掴むのが上手い。彼女の可愛い仕草に騙された男を何人も知っている。  いつも初めてのような振りをして男性経験豊富なのを隠してる。放っておけないと男に思わせる手腕は大した物だと呆れる程。  私は望んだ訳でもないのに背の高いモデル体型でストレートのロングヘアが派手な遊び人に見られるらしい。寄って来る男は、簡単に堕ちる女だと思って来るんだろう。  冗談じゃない。男の目は揃いも揃って節穴か? いったい女の何を見てる?   見た目だけで勝手に人間の中身まで判断するような男は論外。彩花のような女に騙されれば良い。遊ばれてるのは男たちの方だって気付きもしないなんて最低だ。だから彩花とは関わりたくない。  昨夜のあの男は入社四年目で成績トップの営業部の菅田 龍哉(かんだ たつや)。女は、みんな自分に気があると思い込んでる勘違い男。  でも確か入社したばかりの頃、彩花は彼を堕とすと言っていた。自慢のボディで堕とせなかった腹癒せに、私のあんな噂をばら撒いたのだろうか? どっちにしても私には関係ない。あんな奴と二度と会うつもりもない。  エレベーターが一階に着いて歩き始めた私の目に……。  何で、あいつが……。でも出口はここしかない。仕方なくガラス張りの出口に向かった。別に私は悪いことはしてない。  黙って、あいつの横を通り過ぎて地下鉄の駅に向かう。良かった。呼び止められることもなくて。ほっとして地下鉄の階段を下りたところで腕を掴まれた。 「何するの?」 「話がある」 「私にはない」 「俺にはあるんだ」
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