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隼人さんと紅茶
少し走って案内されたのは、紅茶がメインの喫茶店。上品な風格が漂い、お店の造りもブリティッシュな雰囲気。
「紅茶がお好きだと聞いていましたので」
「えっ、兄からですか?」
「はい」
なんて爽やかな返事をする人なんだろうと思っていた。
「でも特別に紅茶に詳しい訳ではないんですけど」
「僕も好きなんです。詳しくはないですけどね」
二人でダージリンのストレートティーを注文した。
「そういえばイギリスにはレモンティーは、ないらしいですよ」
「そうなんですか?」
「それからロイヤルミルクティーもないそうです」
「ロイヤルだからイギリス王室で飲まれているんじゃないんですか?」
「えぇ、ロイヤルミルクティーは日本発祥らしいです。しかも大阪」
「大阪? 本当ですか? 知りませんでした」
「ネットで紅茶のお店を調べていて知ったんですけどね」
と笑った。
優しい家族の温かい愛情で真っ直ぐ育った汚れを知らない人の笑顔だと思った。
窓側の席からは、お庭が見える。小さいけれど手入れされたガーデン。
今は冬だから緑が鮮やかとはいかないけれど。プリムラやパンジー、冬咲きのクレマチスが庭を彩っている。
「可愛い」
庭に咲く花を見て、つい言葉が零れた。
隼人さんは、そんな私を微笑ましく見ている。
「綾さんは僕が想っていた通りの人ですね」
「あの、私どんな風に思われていたんでしょうか?」
「お兄さんから聞かされていた通りです。とても可愛い人だ」
「兄がそんな事を言ったんですか?」
「二人で飲みに行くと、よく綾さんの話が出てましたよ。まるで恋人の話をするみたいに楽しそうに。もしかして前世は兄妹ではなく恋人同士だったんじゃないかな」
「まさか、そんな事ないですよ」
でも内心そうだったのかもしれないなんて思ってしまった。
「ちょっと妬けますね。素敵な奥さんがいるのに妹さんまで綺麗だなんて。僕は一人っ子なんで羨ましいですよ。家では女といえば母と祖母だけですからね」
「お婆様は、お元気でいらっしゃるんですか?」
「はい。元気過ぎて困るくらいです」
「素敵な事じゃないですか。私も元気なお婆ちゃんになるのが目標なんです」
「綾さんなら、きっと可愛いお婆ちゃんになるんでしょうね。その時、傍に居られる男は幸せだと思いますよ。僕、立候補しても良いですか?」
「えっ? でも、まだ、きょう会ったばかりだし……」
「じゃあ、僕のことを知って貰うために親しくお付き合いして貰えますか?」
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