許せない

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許せない

 このまま彩花を許すことは出来ない。  大学で出会った頃は、仲良くしていた事もあったから余計に。可愛くて人懐っこく純情そうだったから男子学生にも人気があった。  いつからだろう。男の注目を集めなければ気が済まないようになったのは。   彩花はどんどん変わっていった。何人もの男たちと平気で付き合うように……。  その中に私が憧れていた先輩が居た。彩花は知っていた筈だ。知ってて彼に近付いた。他に男なんて幾らでも居たのに。  私は彼女から離れて大学でも疎遠になった。それが、またこの会社で出会うなんて……。  あの日のことを嫌でも思い出す。彩花の勝ち誇った笑顔。あなたよりも私の方が女として魅力があるのよと言わんばかりに。  信頼していた先輩が彩花を選ぶなんて思いもしなかった。別に私は告白すらしていなかったけれど……。  それから私はますます男性不信に陥っていった。この年になるまで、まともに付き合ったこともない。付き合いたいとも思わなくなっていた。それを彩花のせいには、するつもりもなかった。  でも今度だけは許せない。彩花も、あの男も……。  体に嫌でも残る痛みと嫌悪感。だいたい男達は知っているのだろうか? 女の子が女になるために、どれほどの痛みを経験するのかを……。  愛してるから、大好きな人だからと自分に言い聞かせて我慢するのかを。好きでもない男のために我慢出来るような生易しいものじゃない。  私にだって恋愛に対する夢はあった。いつか遠い先かもしれないけれど……。心から愛する人と出会って恋に落ちて……。その人の優しい愛に包まれながら経験したかった。  年齢なんて関係ない。早ければいいってものじゃない。本物の愛を見付けた時に……。  もう遅いけれど……。  毎日、朝が来るのが怖くて会社に行くのが苦痛でしかなかった。彩花にも、あいつにも会いたくない。顔を見るのも近くに居ることさえ嫌だった。  会社を辞めようと辞表まで書いた。でも私は何も悪いことはしていないのに……。  私が手を下さなくても必ず報いはあると信じたかった。
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