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「わたしたちの神である《ウンエイ》は、世界にいくつもの国を作ったの」 「ちょっ、ちょっと待って。いま『運営』って言ったんですか?」 「ええ、そうよ。とにかくいまは、黙ってちょうだい。質問はあとで受け付けるから」  創世神と名指された《ウンエイ》――それは間違いなく、この日本で言う『運営』と同じ発音だった。 「わたしが暮らしているのは《アグロ》という国なの」 「ええと、じゃあ、あとは《コントロール》とかありますよね……?」 「びっくりした。よく予測できたわね。でもさっきも言ったように、質問はあとにしてちょうだい」  どうやら、デッキタイプの総称が、そのまま国の名前になっているらしい。「アグロ」はいわば、速攻型のデッキのことだ。  ということは……もう話の全貌(ぜんぼう)が見えてきた気がする。 「そしてその国々は、何千年ものあいだ、戦争を繰り返しているの。どの国が一番強いのか。それだけのために。もしかしたらあなたには、分からないでしょうね。あなたの惑星では、もっと複雑な理由と数々の条件が重なり、利益と損失を考えた上で戦争をするのでしょうから……でもね、わたしたちは『闘わなければならない』――それだけのために戦争をしているの」  でたぞ、カードゲーマーの精神論。「闘わなければならない」というスローガン。 「いま、わたしたちは、窮地に立たされている。手持ちの《カード》では、他の国と同等に闘えないの」  カードの種類には限界があるということか。 「しかしね、われわれの神――《ウンエイ》は、たったひとつ《キンシ・カード》というものを作ったと言われている。それさえあれば、闘いに必ず勝てるのだと」  ようは『禁止カード』のことだろう。いや、ダメだろそれ。 「そしてあなたが手にしているそのカードが《キンシ・カード》なの。間違いない。想像上のものだと思っていた《キンシ・カード》……わたしはこの宇宙のどこかにある、そのカードを探すために冒険にでた、特殊部隊員のひとりなの」 「じゃあ、このカードがあれば戦争に勝てるというわけですね」 「そう。正確には《ブラック・カード》と呼ばれてる。あなたの知っている言葉に直訳するなら……《ブラック》は《黒》ということにでもなるかしら」  そのままじゃないか。  なんだろう。円が使われていたり(でも「圧縮」というのはよく分からない。彼女が住む惑星のなにかの概念なのだろう)、ブラックと黒が相互に翻訳されていたりと、この地球と近からず遠くもないという感じがする。  そのとき、こんな考えが突然浮かんできた。 (あれ? 彼女の住んでいる惑星だったら、僕って、少しくらいは戦力になるんじゃないの? 「禁止カード」も使えることだし)
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