プロローグ

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「……今生の別れちゃうやろ、大げさやな」 「でもクラブ無かったら、会おうと思わな会われへんやん、キャンパスも別なんやし」  その旭陽の言い方が、軽く癇に障った。泰生は言い返す。 「時間作って会おうと思わへんのやったら、そこまでってことやろ?」  旭陽ははっとしたような顔になる。自分が発したのが、やや失言だったことに気づいたようだった。 「そういう意味と違う」 「どういう意味でももうええわ」  口にしてみると、本当にどうでもよくなってきた。もう部活動の集合時間が近いので、泰生は話を打ち切ることにする。 「まあそういうことで、あと2週間よろしく……サマーコンサートの合奏にはもう出えへんけどな」  言い捨てる形になってしまった。泰生は旭陽の顔を見ず、彼を待つこともせずに音楽練習場に向かう。一旦校舎の外に出ると、じわっと湿度がむき出しの腕に襲いかかってきた。  そして最終出席日の今日、泰生は吹奏楽部の部員たちの前で、退部の挨拶をした。 「2年と3ヶ月、ほんまにお世話になりました……自分としても残念なんですが、やっぱり3回になってからちょっときつくなりました、皆さんはこれからも頑張ってください」  泰生がぺこりと頭を下げると、ぱらぱらと拍手が起こった。4回生がちょっとばかり引きとめてくれたことを思うと、あっさりとした幕切れだった。ちらっと右手を見ると、旭陽は足許に置いた銀色の大きな楽器に視線を落としたまま、手を叩いていた。  部長が明日の練習予定を確認し、練習の終了を告げた。お疲れさまでした、と全員で挨拶して、各々が楽器を片づけ始める。泰生は2年と少し弾き続けた、自分より少し背の高い大きな弦楽器を最後に丁寧に拭くべく、2枚のクロスを鞄から出した。
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