哀切のチョコミント

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 豆乳は、3本250円で販売されていた。40代くらいの男性が吟味しているところを見ると、種類が多過ぎて迷っているのだろう。友樹が飲みたいと言っていたものがあるかどうか、泰生は棚に近づいた。  男性が半袖の腕を伸ばした先に置かれていたのは、水色のパッケージの豆乳だった。チョコミント、と書いてある。それを見た泰生の胸が、軽くどきっと鳴った。味の想像もつかないこの奇妙な豆乳を、旭陽が生協で買って何度か飲んでいたことがある。美味しいんか、と訊くと、想像してたよりかなり美味しい、と彼は笑顔で答えた。  男性がこちらを見た。何やら人懐っこい雰囲気を持つ眼鏡の男性は、泰生のために場所を空けてくれた。 「あっ、すみません」 「これ割と美味しいですよね」  明るい声でいきなり話しかけられて驚いたが、無視するのも悪いので、えっと、と泰生は言葉を探した。 「僕は飲んだことないんです、友達が好きでよう飲んでて」  友達、という言葉に、泰生の胸の深いところが疼いた。男性は感じの良い微笑を浮かべたが、密かに心を痛めた泰生にはちょっと沁みる表情だった。 「基本チョコレートです、ミントが後でふわっと来ます」 「あ、そうなんですね……」  男性は買い物かごの中に食パンと牛乳とヨーグルトを入れていたが、そこにチョコミントの豆乳を3本と、砂糖不使用とパッケージに書かれたコーヒーの豆乳を3本入れた。砂糖不使用豆乳も初めて見たので、泰生が思わず棚に注目すると、男性が言った。 「砂糖入ってへんシリーズ、どれも美味しいですよ」  そうなんか。兄貴は甘いやつが好きやけど。  泰生は親切な男性に礼を言って、棚の角に積まれた買い物かごを取った。そして、友樹のためにプリンとバナナとマンゴー、自分のために砂糖不使用のコーヒーと紅茶をカゴに入れる。あと1本でまとめ値引きになるので、少し迷ったが、チョコミントを手に取った。
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