黒い感情

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 私は黒い感情を抱えている。  私は姉が大好きだ。私の家庭は共働きで私は姉と二人で幼い頃からよく遊んでいる事が多かった。それあ小学生、中学生、高校生となってもそうだった。友達もその頃になれば出来ていたが、それでも私は姉と遊んでいる時間が一番大好きだった。  姉は綺麗で、優しくて、そしてユーモアもあった。私は姉になりたいとは思ったことはない。なれると思っていなかったし、なってしまえば隣にいる事は出来ないと思っていたからだ。  私が大学生の頃、姉に彼氏が出来た。いや、違う。本当はもっと前から出来ていたんだろうと思う。私はいつも姉に全てを隠さずに話していたが、どうも姉は違っていたようだ。姉はその人と結婚した。名前は遠藤光という人だった。  姉が選んだその遠藤さんはいつも笑っているような人だった。少し声が大きく、リアクションは大袈裟で苦手なタイプだった。体も大きく、漫画で活躍するとすれば最後は誰かを守って犠牲になりそうな感じだ。  姉が妊娠し実家に帰ってきた頃、私は遠藤さんと話す機会が増えた。そして分かってしまう。ああ、姉は遠藤さんが大好きなのだと。そして、私も気が付く。遠藤さんの事を私も好きになっていると。  別に姉から遠藤さんを奪いたいわけでもない。その逆でもない。私は姉が大好きで、遠藤さんも好きだった。それは倫理に反しているとは関係なく、ただの事実だ。正しい、間違っているなどではなくただの事実だ。  私は黒い感情を抱いている。  でも、黒は悪いという意味ではない。  ただ、光を当てられない、というだけだ。  光を当てられない、表に出せない私の感情。  私の大切で、そして可哀そうな感情。  私は黒い感情を抱いている。
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