7人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
するりとタイを解いてベッドに投げ捨てる。ぱさりと渇いた音。
一本に纏めていた髪も無造作に放つ。ゆうるりとした開放感。中途半端な格好のまま薄型のパソコンを立ち上げた。
駆動音。それが、侮蔑に慣れた耳には酷く心地いい。
感情のない音は、好きだ。風の音、烏の羽音、クラクション。街のノイズだって、教室のそれとは比べものにならない。
小綺麗にした床の上に、ワイシャツとプリーツスカートが落ちる。下着のまま箪笥を漁って、黒のハイネックと赤のミニスカートを穿いた。
パソコンが立ち上がるのを待ちながら、散らばった制服を片付けていく。シャララと機械的なメロディが流れたことで、ようやくパソコンが使えるようになったことを知った。
起動の速さは…、多分標準なんだと思う。詳しくは分からない。別に分かったところで特があるわけでもないし。
「…、メール…。」
唯人(ただひと)かな、と弟の顔を思い浮かべた。そうして開く。
送信元;篠原(しのはら)唯人
件名;業務連絡。
『生きてるかー?俺は元気。まだしばらく帰る気にはならないんで、母さんにも適当に言っておいてくれ』
業務連絡とは何か違うだろ、と思いつつ、双子の弟に答える。
送信相手;篠原唯人
件名;生きてるよー
『了解。帰る気になったらまたメールして。お父さんがいない日、調べておくから』
送信。
カチャリ、とボードを叩いて、そのまま返信が来るまでネットサーフィンする。いくつもの掲示板を渡り歩いた。
最初のコメントを投稿しよう!