暗澹

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するりとタイを解いてベッドに投げ捨てる。ぱさりと渇いた音。 一本に纏めていた髪も無造作に放つ。ゆうるりとした開放感。中途半端な格好のまま薄型のパソコンを立ち上げた。 駆動音。それが、侮蔑に慣れた耳には酷く心地いい。 感情のない音は、好きだ。風の音、烏の羽音、クラクション。街のノイズだって、教室のそれとは比べものにならない。 小綺麗にした床の上に、ワイシャツとプリーツスカートが落ちる。下着のまま箪笥を漁って、黒のハイネックと赤のミニスカートを穿いた。 パソコンが立ち上がるのを待ちながら、散らばった制服を片付けていく。シャララと機械的なメロディが流れたことで、ようやくパソコンが使えるようになったことを知った。 起動の速さは…、多分標準なんだと思う。詳しくは分からない。別に分かったところで特があるわけでもないし。 「…、メール…。」 唯人(ただひと)かな、と弟の顔を思い浮かべた。そうして開く。 送信元;篠原(しのはら)唯人 件名;業務連絡。 『生きてるかー?俺は元気。まだしばらく帰る気にはならないんで、母さんにも適当に言っておいてくれ』 業務連絡とは何か違うだろ、と思いつつ、双子の弟に答える。 送信相手;篠原唯人 件名;生きてるよー 『了解。帰る気になったらまたメールして。お父さんがいない日、調べておくから』 送信。 カチャリ、とボードを叩いて、そのまま返信が来るまでネットサーフィンする。いくつもの掲示板を渡り歩いた。
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