ネオン

2/4
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
午後九時。 ネオンが宝石のようにキラキラとかがやく。家なんか放り出して、ストリートを巡る。夜のかすれた街。 私が愛している家。 夜は人の汚さを隠すから、心地よくて安らげた。 オレンジっぽい茶髪を見つけて、私は赤のミニスカートを翻しながら駆け寄った。 「花梨(かりん)!」 ストリートにしゃがみ込んだ美少女は、煙草をネイルに包んだ手に挟んで、私を見上げた。 紫煙がぷかぷかと揺蕩う。それをゆっくり眺め、消えるのを見届けてから、彼女に言葉を投げた。 「なあ、花梨、」 「どうしたの?泣きそうな顔しちゃって。」 泣きそうな顔を…。していたのかな。 「家族って、何だと思う?」 唐突な問い。 オレンジっぽい茶髪をくるくると巻いて、ほっそりした体をローズピンクのワンピースで包む。長い足を惜し気もなく曝して、ストリートの友人は笑った。かすれたように、きれいに。 「血がつながっただけの、他人。」 ふっくらとラメに彩られた唇が諦めたような言葉を紡いだ。 マスカラでボリュームアップした瞳が花梨をさらに幼く見せる。真っ白な肌とショコラブラウンの目。外国人のような容貌。 フランスの人形みたいだと、思った。 「所詮みんな他人よ。あたし以外は他のひと。理解なんてし合えない」 自嘲気味に花梨は笑った。 「投影なんて、無駄なのに」 それは私にではなく、花梨が花梨の母親に向けたものだ。  
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!