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午後九時。
ネオンが宝石のようにキラキラとかがやく。家なんか放り出して、ストリートを巡る。夜のかすれた街。
私が愛している家。
夜は人の汚さを隠すから、心地よくて安らげた。
オレンジっぽい茶髪を見つけて、私は赤のミニスカートを翻しながら駆け寄った。
「花梨(かりん)!」
ストリートにしゃがみ込んだ美少女は、煙草をネイルに包んだ手に挟んで、私を見上げた。
紫煙がぷかぷかと揺蕩う。それをゆっくり眺め、消えるのを見届けてから、彼女に言葉を投げた。
「なあ、花梨、」
「どうしたの?泣きそうな顔しちゃって。」
泣きそうな顔を…。していたのかな。
「家族って、何だと思う?」
唐突な問い。
オレンジっぽい茶髪をくるくると巻いて、ほっそりした体をローズピンクのワンピースで包む。長い足を惜し気もなく曝して、ストリートの友人は笑った。かすれたように、きれいに。
「血がつながっただけの、他人。」
ふっくらとラメに彩られた唇が諦めたような言葉を紡いだ。
マスカラでボリュームアップした瞳が花梨をさらに幼く見せる。真っ白な肌とショコラブラウンの目。外国人のような容貌。
フランスの人形みたいだと、思った。
「所詮みんな他人よ。あたし以外は他のひと。理解なんてし合えない」
自嘲気味に花梨は笑った。
「投影なんて、無駄なのに」
それは私にではなく、花梨が花梨の母親に向けたものだ。
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