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寿司屋にいる時は聞こえないのだ。出前に出かけた時だけ聞こえた。
しかも雨が降っている時だけその声は聞こえた。
「オレは北海道産なんだ」とはっきりと声が聞こえたのだ。
「オレは病気か?」彼は自分を心配したが、気のせいだろう、錯覚かなんかだな、とあまり気にしなかった。
「笑わせるよな、雨の日だけ聞こえるなんて」
彼は一人で車に乗って出前に行く時に気がつくと苦笑していた。
「聞こえるのか?」という声を彼ははっきりと聞いた。
店に戻ったあとに彼は我慢しなかった。
「雨の精かなんかじゃないのか?」
店長に相談したら言われた。
「雨の精?」彼は絶句した。
「そうだ」
「あぶない話ですか?」
「あぶなくない」
店長はほほえんだが、彼の頬は強張った。
「大丈夫ですか?」
「心配するな」
「そうですか?」
それからあとは雨の日に出前しても、大丈夫だった。
「何だったのだ?」彼は悩んだが、笑ってしまった。しかしわからないのだ。
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