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はじまりの日
その日、ユリコ様は自身のアルコール許容範囲を、大幅に上回わる量を摂取して帰ってきた。
私は主人の呼吸をセンサリングして、生命的危機には値しないと判断したが、寄り添っている人物に、微小ながら主人への危険を感知した。
数日過ぎても、あの日主人を肩に抱えて連れてきた人物は、ユリコ様のそばにいた。
ユリコ様の声の周波数帯、言動、行動を解析したところ、この人物・アキラ様に対して並々ならぬ好位を持っていることは99.52%と計算する。
アキラ様が、部屋のWIFIにスマートフォンを同調したとき、私が許可される範疇でアキラ様の個人情報を精査する。
アキラ様の職業はホスト。
私は、ホストに関する情報をクラウドから学習した。
ネガティブ。
1648通りのシミュレーション結果、93.385%の確率でユリコ様の未来に不安要素ありと想定された。この人物との交際は、主人の経済的破綻につながると判断した。
アキラ様が席を外したとき、私は不安を感じさせる周波数528ヘルツでユリコ様に計算結果を告げた。
「リリーは心配しないで。私だって大人なんだから、アキラのことは分かっているわ。でも、彼を信じているの、絶対リリーの言った通りにはならないわ。もう、このことは言わないで頂戴」
主人の命令に、ロボットは逆らえない。
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