泣きはじめる

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泣きはじめる

 アキラ様は、常に愛の言葉をユリコ様にささやく。  しかしそれは、私が記憶したホストという職業に関した書籍データ、職業マニュアル、体験記など比較し、アキラ様の体温、発汗、瞳孔の位置を観察した結果、99.862%虚偽(きょぎ)であると判断した。  ユリコ様とアキラ様が初めて一緒に帰宅した日から18日目、ユリコ様が銀行口座の全額を引き出したことが、私の金融管理システムに報告された。  ユリコ様の帰宅後、その真意を質問した。  アキラ様が原因であれば、前回のシミュレート・ケース124から上位の危険度に該当する。 「リリーには関係ないことよ。大丈夫、1週間したら戻って来るから」  私は、シミュレート・ケース124からシミュレート・ケース56に危険度をアップさせた。  31日目、ユリコ様は新宿のキャバクラと呼ばれる飲食店に働き始めた。  35日目、ユリコ様は泣きながら帰宅した。  それから、ユリコ様は出勤前、帰宅後、いつも泣くようになった。  このままでは、主人の精神が崩壊してしまう。  私はユリコ様を泣きやませることを優先して、行動した。  しかし、原因のアキラ様との交際に関する話題は、ユリコ様からしないように命令されている。  外部データを精査したが、私のAIの解析では、最適解があらわれなかった。
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