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第一章・Jesus Christ Superstar 3ー①
「ウルフに隠し事は出来ないなぁ。俺も何で彼女と付き合ってるのか分からなくなってるよ。……そろそろ、終わらせないといけないんだろうな」
「あの女は、清らかなお前を堕落させる」
「清らかって程でもないんだけどな。……でもまぁ、彼女のあの感じからしたら、また来そうだし、この家もあんまり安全じゃないかもな。パパラッチが来たら何の防御も出来ないし。ホテルにでも行けるように社長に頼んでみるよ。とにかく今日は、ここで寝てくれ」
ジェリーは、隣の寝室のベッドを指して言った。
「ジェリーはどうするつもりだ」
「俺は床にでも寝るよ」
体が資本のモデルに、睡眠をしっかり取らせるのもジェリーの仕事の内だ。
特に、今は自己管理が出来そうにないウルフの魂が、レイの体を占拠しているのだから余計にだ。
「私は戦場での野営に慣れている。私の方が床で寝よう」
「それは、前の肉体の時だろう?レイの体は戦士として鍛えたものじゃない。仕事に支障が出たら困るんだ。お願いだから、ベッドで寝てくれ」
「それは、お前の寝床だ。私が奪うような真似は出来ん」
「いやだから、そんな事は、もう良いから!とにかくここで寝て!」
そして、ウルフにバスルームの使い方を教えてから部屋に帰ると、バスルームから何度か絶叫が聞こえていたが、ケガをしたような訳ではなさそうなので放置した。
グッタリとしながら「現代の道具は魔道具だ」と言いながら、バスルームから出て来たウルフの頭にドライヤーを当ててやると、飛び上って部屋の隅に逃げ込んでしまった。
今の『レイ』は、まるで野性動物だ。
このまま、一人で管理させていたら、億という保険の掛かっている皮膚や髪の毛をボロボロにされそうで、改めて一から体のケアを教えなければならないだろう事は明白だった。
ジェリーが風呂に入り、出て来ると、強引に腕を引かれてベッドに押し込められた。
「ちょっと!だから、ここはウルフが寝てくれって……」
「私もここで寝れば問題ないだろう」
そう言うと、ウルフもその体を隣に滑り込ませて来た。
「えぇ~~~~?!」
ジェリーは、ウルフの太い腕にガッチリとホールドされて、逃げ場を失う。
「ちょっと!俺は男と寝る趣味はないんだけどっ!」
「別にお前をどうこうしようとは思っていない。……たが、良い匂いだな。お前からは、甘い香りがする……」
「それは、シャンプーの匂いだよっ!ちょっ……髪の毛、食べるなっ!」
ウルフが首筋から頬へかけて持ち上げるようにして愛撫するので、ジェリーも変な気持ちになりそうになる。
男の自分が、こんな風に撫でられる日が来ようとは、人生何があるか分からない。
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