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第一章・Jesus Christ Superstar 4ー①
ウルフの生きてきた時代とは、何もかもが違う。
それは毎日のように襲い、ウルフを驚愕させていた。
「ジェリー……現代のアメリカでは、頭の皮を剥がれた者達が、恥じる事なく闊歩している時代なのだな……」
ウルフの視線の先に、スキンヘッドの男が歩いていた。
これからも『頭皮を剥ぐ発言』が頻繁に出るようでは困るので、あれはファッションなのだと説明すると、目をむいて驚いていた。
インディアンは、毛髪を生命の存在する源と考え、神聖な物として大切にする民族だ。
それは部族によって様々な髪型があったが、一族は共通の髪型をもってして帰属を示していた。
ウルフが率いていたブラックフット族は、レイのような長髪だったのかと聞くと、少し違ったらしい。
だが、モデルとして契約している限り、勝手に髪型を弄られては困るので、絶対に髪型に変えるなと念を押しておいた。
ファッション雑誌の撮影は、ジェリーが懸念する程の事もなく、すんなりと進んだ。
ただ、やたらとウルフが目を瞑るので、カメラマンからは何度かダメ出しはされていた。
後でその理由を聞くと、レイならばどうするのかと聞いていたらしい。
ジェリーが見た印象としては、ウルフの感性が加わっているからか、以前より男らしいイメージのポージングになっていたように思う。
それはレイの浅黒く野性的な風貌とマッチして、以前にはない男性的なイメージが前面に出ていて、カメラマンを喜ばせていた。
撮影が無事に終わり、帰ろうとすると、ウルフが逆毛を立てるようにして、威嚇しているのが分かった。
「う、ウルフ?……どうした?……今度は何だ?」
頭皮を剥がれた以外に、ネイティブ・アメリカン的にアウトな人間がいたのかとジェリーも身構えた。
「ジェリー……。もしかして、ここで戦闘になるかも知れん」
「えぇ?この撮影所で?!……どこにそんな過激派組織がっ……」
「あれは、私に闘いを挑んで来ている敵の恐れがある。……ここで待ってろ」
ウルフが向かう先には、頭をモヒカン刈りをしたモデルが歩いていた。
ジュリーは、慌ててウルフの腕を掴んだ。
「ちょっと待って。もしかして、あの彼が敵だとか言わないよな?」
「あの髪型は、敵部族を挑発する為のものだ……宣戦布告の記しだ」
「あぁ~!違う~!違う~!お願い、やめて~!」
髪型一つで戦争する騒ぎのウルフを連れて歩くのは、疲労を極めた。
もしかしたら、仕事云々の前に『一般常識』を教えなければならないのかも知れない。
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