第一章・Jesus Christ Superstar 5ー②

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第一章・Jesus Christ Superstar 5ー②

多忙なスケジュールの上、外出もままならない現状だったので、サンダー・ハートに会う旨をジェリーに相談した。 「それは会うなとは言えないなぁ。でも、そのサンダー・ハートも君の知ってる人物かどうか分からないんだろう?」 「そう思って、私とサンダー・ハートしか知らない事をカマ掛けてみた。正しく答えてきたので、恐らく本物に違いないと思う」 「成る程。そうしたら、サンダー・ハートも現代に飛ばされて来たって事だな。じゃあ、ステッペンウルフとしての使命も分かるかも知れないね」 「サンダー・ハートは知っていると思う。前回の憑依の際にも、私達は共に飛ばされて来た。戦場で共に闘った勇士として、私達はインディアンの為に尽くす運命なのだ」 ジェリーは悩んでいた。 会わせてはやりたいが、有名人であるレイを簡単に外へ出す訳にも行かない。 もしも、出るとしたら完全にレイだと分からない姿でいる必要がある。 「分かった。でも、その場所は俺に決めさせて貰うし、ウルフは絶対にバレないように変装してくれ。で、申し訳ないけど、俺も同行させて貰う。それでも良い?」 「それで良い。……ジェリー、本当にすまない」 「気にするなよ。全然、構わないんだから」 「出来るだけ、早くレイに体を返してやりたい。……レイから、ジェリーを奪っているような今の状態は、胸が痛む」 「それは……ウルフのせいじゃないって言ったろ?」 「もし、この魂の命が断てるならば、今すぐにでも私は、お前とレイの為に死んでみせよう。だが、使命を全うしなければ、この肉体を離れられないのなら、それを早く遂げるしかない」 「……死ぬとか言うなよ……。簡単に死んだらダメだ」 ジェリーは泣きそうな顔になって、ウルフの腕を掴んでいた。 ジェリーは物心もつかない頃、両親が一家心中をしようとして、一人生き残った。 特に貧しかった訳でもなく、円満な家庭だったにも関わらず、両親が何故、死を選んだのか未だに分からない。 イギリスからの移住をしていたジェリーの家族には引き取ってくれるような親戚はなく、それからの人生は孤独に耐えるしかなかった。 「レイは勿論、弟として大切な存在だよ?でも、ウルフの事も大切だって言っただろ?本当は、2人共いて欲しいって思う俺は我が儘なのかな」 「……ジェリー……」 ウルフは、もう我慢出来なかった。 レイには申し訳ないが、ジェリーへの気持ちを抑える事は、これ以上は無理だった。 この感情に気が付くべきではなかった。 ジェリーが決定的に拒絶してくれれば、我慢も出来た。 だが、こんなに心を許してくれているのなら、それから逃れる術がない。 ウルフは、レイの気持ちを逆に封印する事に決めた。 自分が去った後、レイがジェリーに愛を告げるにしても、黙って一生を終えるにしても、それはレイの選択として選ばせてやりたい。
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