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第2章・Crazy Wolf 1ー③
昼からの仕事も終わらせ、マンションに帰宅する頃、ジェリーはウルフの態度がおかしい事に気が付いた。
会話が少なく、妙によそよそしい。
コーヒーを渡す時に触れた手にすら、ビクッと反応して、接触を拒んでいるようにも見えた。
以前は、あんなにも熱くジェリーを求めるようだったのに、今は触りたくもないという程に避けられているような気がする。
帰ってからもウルフは言葉少なく、そのままバスルームへと消えた。
ジェリーは今日一日で、何があったかを思い返していた。
自分に何か落ち度はあっただろうか。
確かに、午前中の仕事はテリーにハメられたが、それによってよりウルフが自分を大切に想ってくれているのを知った。
24時間ずっと側にいて、こんなわだかまりのある状態は堪えられない。
昨日まで、自分に触れて欲しいとすら思わせておいて、このいきなりの放置状態はジェリーには苦痛だった。
バスルームから出て来たウルフをジェリーは引き留めた。
「……ウルフ、俺、何かした?……何か、怒ってるのか?」
「……いや、そうじゃない。何も……」
「何もない事はないだろ?俺をずっと見ないじゃないか!」
そう言われて、ウルフはやっとジェリーに瞳を合わせた。
ジェリーはくしゃりと顔を歪ませると、泣きそうな顔をしていた。
「何で避ける訳?……俺の事……好きだったんじゃないのかよ」
「愛している。お前が愛しくて堪らない」
「じゃあ、何なんだよ!何で俺を見ない?」
ウルフはジェリーから、目を反らしたまま、本心を吐露した。
「お前は優しい。だからレイの体を奪っているような私にすら、心を許してくれている。……その感情が同情なのは分かっているのに、私はお前にレイを越えて最も愛されるのを、期待せずにはいられない」
ウルフがそんな風に思っているとは、ジェリーは知る由もなかった。
「私は、お前に愛されているレイが羨ましい。私こそが、レイとして生まれて来たかった。初めからレイとして生きていれば、お前にも受け入れて貰えただろう」
「ウルフ……」
「いずれ去る男の世迷いごとだ。気にしないでくれ」
ウルフはそのまま寝室に消えようとしていた。
ジェリーは、そんな誤解をされたままウルフが離れていく事に、身が引き裂かれる思いがした。
誤解だと思う自分は、もう十分にウルフを受け入れている。
自分が勇気を持てないが為に、ウルフを不安にさせていた。
離れたくない。
ジェリーは己が気持ちの赴くままに、ウルフの背中へ飛び付いた。
「レイは、弟みたいなもんだって言っただろう!何で弟に嫉妬してんだよ!君はっ」
「ジェリー……」
「レイには、ウルフのような感情は湧かないよ。レイとはセックス出来ない。……でも、ウルフの手には感じてしまう」
男に感じないと拒絶しながら、毎日のように繰り返される優しい抱擁にすら、下肢を熱くさせる自分を知られるのが怖かった。
「もっと触ってくれ、ウルフ。……俺は、ウルフとセックスしたい。自分も、ウルフにも気持ち悦くしてやりたい」
突如襲い来る猛獣の如き欲情に、ウルフはもう、その衝動を抑えられなかった。
ジェリーを痛い程にきつく抱き締め、その唇に噛みつくような口付け。
ジェリーの口内を、野獣のような舌が暴れ回り、蹂躙する。
二人の唇の隙間からは、唾液の混ざり合う粘着音が聞こえて、ジェリーはそれだけでも股間を熱くさせた。
そして、それをウルフの下半身に合わせると、それを上回るような熱い塊がジェリーの性器を押し上げて来た。
「ウルフ……抱いてくれ……」
2人は再び、その溢れる想いを伝え合うように、熱いキスを交わした。
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