第一章・Jesus Christ Superstar 1ー③

1/1
前へ
/43ページ
次へ

第一章・Jesus Christ Superstar 1ー③

再びタクシーに乗り込んで、ジェリーの住むテラスハウスに帰宅する。 褐色砂岩のテラスハウスは、昔ながらの風情があって、独り暮らしの男の住む家としては洒落た住居ではあった。 「ありがとう。ウルフはエスコート慣れしてるんだな。前に彼女がいたのかなぁ?」 「生まれた体の時は3回、転生してからは4回、結婚している。子供は全員で、16人いるな」 「えぇっ?!……そっ、そんなに?」 「レイの体では、何人の妻がいるのかは知らんが……」 レイは、11歳年上のモデルのミラという恋人がいる。 2人はファッションショーで知り合い、ミラに押し切られるようにして付き合っているが、彼女が世界的なトップモデルなだけあって、かなり世間を賑わせた。 それが、レイの売れるキッカケにもなったので、事務所としても結婚や妊娠でもしない限りは、黙認している。 それをまるで別人であるウルフに、何と説明をしたものか。 同じモデルではあるし、恋人同士でもあるのに、これから会わない訳にもいかないだろう。 ジェリーは仕方なしに、ありのままをウルフに話した。 「とにかく、私が記憶のない事は公にしながら仕事をするなら問題ない」 「恋人同士のふり、出来るのか?」 「どうやら、同化しきれない事で、この体の人間の感情が客観的分かるようだ。レイが嫌がる人間や、好きな人間は体から伝わってくる。その女を愛しているなら、そのように接する事も出来るだろう」 「そしたら大丈夫そうかな」 ジェリーは、ウルフを使っていない奥の部屋に連れて行き、トランクを開けて服をクローゼットに掛けてやる。 ウルフは、ジェリーの肩を掴んで振り向かせると、その顎を持ち上げた。 「お前の青い瞳は、澄んでいて美しい」 「あ、ありがとう……」 ジェリーはウルフの行動に思考が付いていけないでいた。 「お前の金の髪も、太陽の光のようで眩しい程だ」 「そ、そう?」 何だか、妖しげな雰囲気になってきて、ジェリーは鳥肌が立つのを止められなかった。 「レイは、お前の事を大層気に入っているようだ。お前に対する感情は特別に熱い」 「レイは、俺を兄のように慕ってくれていたから」 成る程、兄か、と言って、ウルフはジェリーの体を抱き寄せた。 その抱擁は、弟からのものとしては余りにも艶めいていて、ジェリーは全身の毛穴を引き締めるようにして、体を硬直させた。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加