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第一章・Jesus Christ Superstar 1ー③
再びタクシーに乗り込んで、ジェリーの住むテラスハウスに帰宅する。
褐色砂岩のテラスハウスは、昔ながらの風情があって、独り暮らしの男の住む家としては洒落た住居ではあった。
「ありがとう。ウルフはエスコート慣れしてるんだな。前に彼女がいたのかなぁ?」
「生まれた体の時は3回、転生してからは4回、結婚している。子供は全員で、16人いるな」
「えぇっ?!……そっ、そんなに?」
「レイの体では、何人の妻がいるのかは知らんが……」
レイは、11歳年上のモデルのミラという恋人がいる。
2人はファッションショーで知り合い、ミラに押し切られるようにして付き合っているが、彼女が世界的なトップモデルなだけあって、かなり世間を賑わせた。
それが、レイの売れるキッカケにもなったので、事務所としても結婚や妊娠でもしない限りは、黙認している。
それをまるで別人であるウルフに、何と説明をしたものか。
同じモデルではあるし、恋人同士でもあるのに、これから会わない訳にもいかないだろう。
ジェリーは仕方なしに、ありのままをウルフに話した。
「とにかく、私が記憶のない事は公にしながら仕事をするなら問題ない」
「恋人同士のふり、出来るのか?」
「どうやら、同化しきれない事で、この体の人間の感情が客観的分かるようだ。レイが嫌がる人間や、好きな人間は体から伝わってくる。その女を愛しているなら、そのように接する事も出来るだろう」
「そしたら大丈夫そうかな」
ジェリーは、ウルフを使っていない奥の部屋に連れて行き、トランクを開けて服をクローゼットに掛けてやる。
ウルフは、ジェリーの肩を掴んで振り向かせると、その顎を持ち上げた。
「お前の青い瞳は、澄んでいて美しい」
「あ、ありがとう……」
ジェリーはウルフの行動に思考が付いていけないでいた。
「お前の金の髪も、太陽の光のようで眩しい程だ」
「そ、そう?」
何だか、妖しげな雰囲気になってきて、ジェリーは鳥肌が立つのを止められなかった。
「レイは、お前の事を大層気に入っているようだ。お前に対する感情は特別に熱い」
「レイは、俺を兄のように慕ってくれていたから」
成る程、兄か、と言って、ウルフはジェリーの体を抱き寄せた。
その抱擁は、弟からのものとしては余りにも艶めいていて、ジェリーは全身の毛穴を引き締めるようにして、体を硬直させた。
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