3.夢の競演。おにぎり大作戦

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 巌が「やっぱよ」としみじみとした声を出した。 「同じおにぎりロボットでもよ。箱に飯を入れて成型するやつと、人の手に似たもんで握るやつじゃあ、人の手に似たやつの方がうまそうに見えるよな。ただうまそうなだけじゃなくてワクワクする」 「本当ですか?」と公武が目を輝かせる。 「そういっていただきたくて、改良に改良を重ねてきました」 「なによりみんなが嬉しそうにしている。それが一番だよな」  公武と松前はホッとしたように頬を緩めた。巌は「よおし」と首を左右へ振ってストレッチをすると「おおい」と柚月へ手を振った。 「そろそろ戻るわ。柚月のにぎりめしも食えたしな」  えっ、と柚月はあわてて巌へ駆けよる。 「もういっちゃうの?」 「ひとりっきりにして悪いけどよ。阿寒もいるから心配ねえな」 「ねえ、本当にちゃんと寝てる? 無理しちゃ嫌だからね」 「ここで無茶しねえでいつするんだ、っていいてえところだが──」  巌は手を伸ばして柚月の頭を愛しそうに撫でた。 「わかっている。無茶はしねえよ」  地面が揺れる。慣れたとはいえ、ドキッとするほどやや大きめの地震だ。巌は顔をくしゃりと崩す。 「……いつまで地震が起きるんだとか、うんざりだとか、なんとかしてくれとか。そんなことばっかりいわれてもよ。できるわけねえだろうがなあ。俺が地震を起こしているんじゃねえっつうの」  うん、と柚月も目を潤ませる。「まったくよお」と巌は大きな笑みを浮かべた。 「人間ごときにできることなんて限られるんだっつうの。さらなる災害が起きたらどうするって、俺に責任なんてねえし、責任をとれるわけねえだろうが」  俺は、と巌は真っ直ぐに柚月を見る。 「お前の笑顔を見るために動いている。それだけだ。これはいつまで続くのかわかんねえ地震だ。それでもそれなりにお(かみ)が動けるように片をつけてくるからよ。そうしたら──一緒に家へ帰ろう」 「──うん」  柚月は涙で潤む瞳を父へ向けた。    *  午後の『おにぎりん』の炊き出しが終わったころだ。  なにやらサッポロ・サスティナブル・テクニクスの面々の様子が変だった。 『おにぎりん』のプログラム確認から操作一式をほかの社員全員がトレーニングしていたのだ。
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