1.柚月の弁当は本当に──うまそうだなあ

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「相変わらずうまそうな弁当」  今日の献立はスクエア型の弁当箱に、ひと口カツ、きんぴらごぼう、煮卵、カブの浅漬け、プチトマト、それから菜飯ご飯を彩りよく入れた。本当はわっぱ弁当箱を使いたかったのだが「やりすぎだから」と仁奈に止められたのだ。 「食いて―」  途端に仁奈と亜里沙が血相を変える。 「図々しい。軽々しくそういうことをいわないでよ。私たちがどんだけ我慢していると思ってんのよ」 「そうだよ。どんなにおいしそうなおにぎりでもグッと我慢しているんだからね」  すまん、落ち着け、と陽翔はタジタジだ。 「ちょっといっただけだよ。それよりこれ」  陽翔が柚月たちへ用紙を差し出す。 「学祭イベントの班分けだってさ。『行灯』にチェックを入れて昼休み中に学祭委員へ出してよ。特に柚月、間違えるなよー」  見ると用紙には『行灯』と『模擬店』の二項目があった。  柚月たちはその場で『模擬店』へチェックを入れる。「なんでだよっ」と陽翔は吠える。柚月は首をかしげて陽翔を見た。 「行灯班は人手が足りないの?」 「そういうわけじゃないけどさ」 「わたしは甘味処(かんみどころ)をやってみたいなあ。大詰めになって人手が足りなくなったら手伝いにいく。それじゃ駄目?」 「そりゃおれだって柚月の甘味を食いたいけどさあ」  なんだよちぇー、と陽翔は不貞腐れつつも「出しておいてやるよ」と柚月たちの用紙を受け取り去っていく。 「……悪いコじゃないんだけどね」、「そうなんだよね」と仁奈と亜里沙はつぶやいた。  それからそろって柚月へ顔を向ける。 「柚月さ。なんか……嫌がらせとか受けていない?」 「へ? なんの? 誰に?」 「あー……受けていなさそうだね。よかった。ならいいよ」 「だからなんの?」  繰り返しても二人とも曖昧に笑うだけだ。なんのことだかさっぱりわからない。
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