2.祭り前の必死な時間って、どうしてこんなに楽しいんだろうね

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 そして日が変わって学祭前日だ。  焦燥感は前日の比ではなかった。  授業は学祭の注意事項のホームルームのみで、あとは全時間学祭準備だ。  校内のそこかしこで声が立ち、誰もが無我夢中だ。柚月もいつ弁当を取ったのか覚えていないほど、あれやこれやと走り回った。  焦りすぎて皿をひっくりかえしたり、布を裏返して飾りつけしたりとやり直しが続出だ。  これ、終わるの? 本当に学祭ができる?   なんども泣きたくなる。  無我夢中で手を動かして、「できたーっ」と亜里沙が飛びついてきて顔をあげた。外はすっかり暗くなって強制下校時間が迫っている。  仁奈も「間に合ったー」と柚月へ赤い目を向けて、ようやく柚月は肩の力が抜けた。  ……本当に間に合ったんだ。 「みんなお疲れーッ」  級長の声が教室に響いた。見ると黒板前に担任の先生と学祭委員も立っていた。 「いよいよ明日から本番だ。この一か月のがんばり、明日にぶつけようぜっ」  せえの、と掛け声があがって、クラス全員で「おおっ」と拳を突きあげた。  鳥肌が立つ。  ヘトヘトなのに妙な緊張感が身体にみなぎる。 「あたし、今日、眠れないかも」、「私もー」、「わたしも」と言葉を重ねる。  学祭はまだはじまっていないのに、ふわふわとした達成感があった。
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