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そして日が変わって学祭前日だ。
焦燥感は前日の比ではなかった。
授業は学祭の注意事項のホームルームのみで、あとは全時間学祭準備だ。
校内のそこかしこで声が立ち、誰もが無我夢中だ。柚月もいつ弁当を取ったのか覚えていないほど、あれやこれやと走り回った。
焦りすぎて皿をひっくりかえしたり、布を裏返して飾りつけしたりとやり直しが続出だ。
これ、終わるの? 本当に学祭ができる?
なんども泣きたくなる。
無我夢中で手を動かして、「できたーっ」と亜里沙が飛びついてきて顔をあげた。外はすっかり暗くなって強制下校時間が迫っている。
仁奈も「間に合ったー」と柚月へ赤い目を向けて、ようやく柚月は肩の力が抜けた。
……本当に間に合ったんだ。
「みんなお疲れーッ」
級長の声が教室に響いた。見ると黒板前に担任の先生と学祭委員も立っていた。
「いよいよ明日から本番だ。この一か月のがんばり、明日にぶつけようぜっ」
せえの、と掛け声があがって、クラス全員で「おおっ」と拳を突きあげた。
鳥肌が立つ。
ヘトヘトなのに妙な緊張感が身体にみなぎる。
「あたし、今日、眠れないかも」、「私もー」、「わたしも」と言葉を重ねる。
学祭はまだはじまっていないのに、ふわふわとした達成感があった。
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