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ガタンと窓が音を立てた。やがてガタガタと足元が揺れる。
地震だ。
あちこちで悲鳴があがり、亜里沙が柚月にしがみつく。その亜里沙の肩を撫でてしばらくすると地震はおさまっていった。
「怖かったねえ」と仁奈も胸に手を当てている。
「最近、地震が多いよね。そろそろ防災グッズとか買おうかな」
「そうだよねー」
「え? ないの?」と柚月は目を見張った。
「乙部家はあると?」
「あるなんてもんじゃないわよ。玄関先にヘルメットがあって邪魔なくらい」
「お父さんの仕事用じゃなくて?」
「わたしの分もすぐに使えるように出ている。懐中電灯は全部の部屋にあるし、水だってたっぷりストックがあるわ」
「さすが乙部家っ」と声を裏返す二人へ柚月も「どうしてないのっ」と声を裏返した。
だってお父さんはあんなにいつも地震を心配していて、今度こそ大きな地震がくるから気持ちの準備を怠るなってしつこいくらいなのに。
それなのに?
一般家庭ではそんなこと、どうでもいいことなの? お父さんが心配していることは、ぜんぜん世間に伝わっていないってこと?
──大丈夫なのかな。
うつむきかけて、「そうじゃなくて」と顔をあげる。
「さっきの話の続きよ。わたしが知っておくべき話って?」
そういいかけた柚月の声に別の声が重なった。
「柚月さん、こんにちは」
公武が立っていた。
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