4.ちょっとちょっと──誰?

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「えっ? いえそんなご迷惑をおかけできません」 「僕が心配です」  公武は表情を引きしめて断言した。本気で心配してくれている顔だった。胸が苦しくなる。 「……遅くなっちゃいますよ?」 「大丈夫です」 「じゃあ……お願いできますか?」  公武は「もちろんです」と力強くうなずいた。目尻が大きくさがる。やっぱり公武さんの笑顔を見るとホッとする。  それから時間まであれこれ校内を案内して回った。  教室校舎へ入ってお化け屋敷を回り、クレープ屋でクリームチーズとはちみつのクレープを頬張り、体育館でライブを見たり図書館を覗いたりだ。  天陣山でおにぎりを食べているときも思ったけれど、公武と一緒だとあっという間に時間がすぎる。  もう少しだけ、と廊下を進んでいると模擬店を片づけているクラスに気づいた。 「もうそんな時間? しまった。戻らなくちゃ」 「すみません。すっかりお引き止めして」 「公武さんのせいじゃありません。でもここで失礼して片づけにいきますね」 「校舎の外でお待ちしています。安心してゆっくり片づけをしてください」  はい、と頭をさげて公武へ背を向ける。 「遅くなってごめんー」と教室へ飛び込む。すぐに「本当だよ。遅いぞー」と仁奈と亜里沙の声が飛んできた。  見ると教室の片づけはほとんど終わっていた。あとは机を戻すくらいだ。 「あー……役立たずでごめんなさい」 「冗談だよ。ゆっくりしろっていったのはウチらだから。で? 楽しめた?」  うん、と大きくうなずくと「よかった」、「よしよし」と二人に頭を撫でられた。 「二人とも機嫌がいいのね。なにかあった?」  へっ、と二人そろって声を裏返す。 「いやあの」、「そうかな」としどろもどろになり、視線を合わせて「ひょっとして亜里沙も?」、「仁奈も? あら、おめでとう」と驚いていた。 「──またわたしだけのけ者?」 「ああごめん。そうじゃなくて」、「うん、そうじゃなくて」と二人が口々に、実は、といいかけたところだった。  勢いよく陽翔が教室へ駆け込んできた。
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