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「お伝えしたとおり、僕は中学高校と男子校でした。なかなか厳しいところで、過度の親の期待を背負った生徒も多くて。重圧に耐えられず、知り合いの何人かが世界から姿を消しました」
六年間でひとり二人ではない。毎年誰かがいなくなった。
不登校になったと思いたかった。そうではなかったと知らされたときの絶望。
さらには、明らかに異常事態であるのに、大人の誰ひとり声をあげなかった理不尽さ。
「……僕たち生徒自身も声をあげられなかった。受験で気持ちに余裕がないのを盾に事態に向き合わなかった。あのとき、あいつらと一緒に逃げておけば、あるいはもっと違う声をかけていたら、いまなお連絡を取り合える仲でいられたかも。よくそう思います」
唇を噛む公武を見て、柚月も眉を揺らす。学祭の前に公武からかけられた言葉を思い出す。公武さんにはもう一緒に楽しめない人たちがいる。だから、「いま全力で楽しめ」って伝えてくれたんだ。
公武はいっそう力強い眼差しになる。
「ですから君をほうってはおけない。迷惑でしょうが、あきらめてください」
ガッシリと陽翔の肩をつかむ。
「君はひとりじゃない。忘れないでください。いつだって頼ってください。待っていますから」
陽翔が眉を大きく歪める。「ああもう」と首を振って、それまでの斜に構えた視線ではなく、真っ直ぐで必死な眼差しを公武へ向けた。
「本当に頼っちゃいますよ?」
「全力で支えます」
公武の力強い答えに柚月まで身体が熱くなった。
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